彼と彼女の、最大の不具合
「部長の言う通り、今回スムーズだったな。助かった」
頬杖をつきながら、右京くんが横目でこちらを見る。
そんなのこっちのセリフですけどー!と、その綺麗すぎる顔に向かって叫びたくなる衝動を必死に飲み込んで、なんとか平然を装う。
「右京くんのおかげだけどね。私が上手くできないせいで、いつも遅れちゃうし」
そう言いながら、ちょうど運ばれてきたお通しのもつ煮込みを箸でつまみ、湯気ごと口へ運ぶ。
少しだけ濃い味が広がって、ビールとの相性に思わず肩の力が抜ける。
「でも、香坂のおかげで毎回いいもの作れてる」
あぁ、好き~~っ!!!全然そんなことないのに~!
現実の私はというと、職場ではむしろ右京くんに対して突っかかりすぎ!ってチームから軽く注意されることすらあるくらいなのに!
「店頭に並ぶ日が楽しみだね」
何気なくそう言って笑うと、右京くんはグラスを軽く傾けながら一瞬だけ目を細めて、クスッと小さく笑った。その笑い方がまた静かで、余計に心臓に悪い。
「並んだら見に行こう」
なんて、まるで天気の話でもするみたいにサラッと言うから、一瞬思考が止まる。
え、っと……それはふたりで、ですか?
喉まで出かかった言葉をなんとか飲み込んで、私はビールに視線を落としたまま固まる。たぶん今の私、顔がちょっとどころじゃなく熱い。
内心では汗をかきまくりで、さっきまでのもつ煮込みの温かさとか比じゃないくらい心拍数が上がっているのに、右京くんはそんな私の動揺にまったく気づいていない様子で、いつも通り淡々とビールを飲んでいる。
その余裕がまた腹立たしいくらいで、そして同時にどうしようもなく好きだと思ってしまう。
私を簡単に振り回してくるところも好き。
こうやって何気ない一言でさらっと距離を近づけてくる右京くんに、今日もまた一方的に心を持っていかれていた。