クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない

十一話 甘い生活と決断

 隼人さんと同居を始めたその夜、同じベッドで眠ることを少しだけ期待していた。私のアパートに隼人さんが来ていた時は一つの布団で一緒に寝ていたからだ。
 しかし、隼人さんが私に用意したのは、同じベッドではなく、ゲストルームの寝心地のいい広いベッドだった。

「自分の部屋だと思って自由に使ってくれ」
 隼人さんに案内されたリビング奥の部屋は、ベランダ付きで、大きなクローゼットまであって、私が住んでいた部屋より広かった。
「こんなにいい部屋、使っていいんですか?」
「ああ。今日から瑞希の部屋だ。クローゼットも空けておいたから、遠慮なく使ってくれ」
 隼人さんの細やかな気遣いがありがたかった。
「ありがとうございます! しばらくお世話になります」
「じゃあ、おやすみ」
 そう言って、隼人さんが部屋を出て行き、一人になった途端寂しさが込み上がる。
 広いベッドにゴロンと横になるが、一人で眠るには広すぎて落ち着かない。

「……ベッドがあるんだから、さすがに一緒に寝ることにはならないよね」
 そう思うけど、今夜は一人でいるのが苦しい。
 目を閉じると、荒らされた自分の部屋がありありと蘇る。床に散乱した衣類や本、割れた食器、それに無くなっていた隼人さんとの契約書。
 思い出すだけで、怒りと悲しさでいっぱいになる。
 知らない人間が私の部屋に侵入しただけではなく、私の持ち物に触れたと思うと気持ち悪い。隼人さんに買ってもらった服も、床に無残に落ちていた。
 なぜ私がこんな目に遭わなければならないのか。
 じわじわと込み上げてくる恐怖に指先が震え、ベッドの中で小さく丸くなった。怖くて仕方なかった。目を閉じると、見知らぬ影がすぐそこに迫ってくるようで眠れない。こんなこと初めてだ。

 隼人さんと一緒にいた時は何とか気持ちを抑え込むことができたけど、一人になると恐怖が襲って来て、部屋の電気も消せない。
 今すぐこの部屋を飛び出して隼人さんの所に行きたい衝動に駆られるが、これ以上隼人さんに迷惑はかけられない。そう思った時、トントンと控えめにドアが叩かれ、弾かれたようにベッドから起き上がった。
 恐る恐るドアを開けると、部屋着姿の隼人さんが立っていた。
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