クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「何度もすまん。その、大丈夫か? 今日は空き巣に入られた部屋を見て、かなりショックだっただろう?」
 隼人さんが心配そうに眉を寄せる。
 優しい言葉に目の奥が熱くなり、ぎゅっと奥歯を噛みしめて耐えた。
「ありがとうございます。大丈夫です。隼人さんの美味しい手料理をいただきましたし、この部屋もすごく快適で、よく眠れそうです」
 眠るまで一緒にいて欲しいと言いそうになったけど、これ以上、隼人さんを心配させたくなかった。
「……無理してないか?」
 隼人さんが私の顔を覗き込んだ。
「いえ、本当に大丈夫です」
 心配させないように微笑むが、急に喉の奥まで熱い感情が込み上げてきて、目の前の隼人さんが歪んだ。
「……ごめんなさい。なんか、急に……」
 お風呂でさんざん泣いたはずなのに、知らない人間に部屋を荒らされたショックと恐怖で胸が押しつぶされそうだった。
 唇を噛みしめて涙を我慢していると、大きな腕が私の背中を抱いた。
 鼻先が隼人さんの逞しい胸に当たる。

「無理するな。俺の前では強がるな」
 耳元で響いた低く優しい声に、ぶわっと涙が溢れ出る。
 決壊したダムのように涙が止まらなかった。
 大きな手が私の背中を優しくさする。大丈夫だよ。俺はここにいるよ。そう言ってくれているようで、激しく乱れた気持ちも少しずつ落ち着きを取り戻す。
 こんな風に誰かに無防備に甘えたのは子どもの時以来かもしれない。
 いつの間にか人に甘えることが苦手になっていた。なのに、不思議と隼人さんには素直に甘えられる。
「……少し落ち着いたか?」
 上から隼人さんの声がして、彼の胸に顔を埋めたまま返事をした。
「……はい」
「良かった。おいで」
 隼人さんが私の手を引っ張ってベッドに連れて行く。言われるままベッドに横になると、隼人さんが布団を掛けてくれた。
「パリからのロングフライトだったんだ。疲れているだろう?」
 ベッドの端に座った隼人さんが、涙の痕をティッシュで拭いてくれる。
「……目を閉じるのが怖いです」
「大丈夫だ。俺がついている。眠れ」
 今度は大きな手が私の頭に置かれ、髪を優しく撫でてくれる。安心感のある温かな手に張り詰めていた神経がようやく静まっていく。
「おやすみ」
 目を閉じかけた時、そう言われたけど、隼人さんがどこかに行ってしまいそうで、咄嗟に隼人さんの手を強く掴んだ。
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