クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
十三話 決着
創立記念パーティーの日、青いドレス姿の私は銀座の一流ホテルに足を踏み入れた。
今日の招待客は八百名で、ほとんどがスカイクレスト航空の社員だ。
私は緊張しながら広いホールの扉を開けた。するとスリーピーススーツをビシッと決めた今岡キャプテンに声をかけられた。
「南雲、ドレス持っていたんだな」
今岡キャプテンが珍しいものを見るような視線を向けてくる。
「どうせ、私にはドレスよりもパイロットの制服の方が似合うって言うんでしょ?」
照れくささに軽口を叩くと、キャプテンが首を振る。
「そんなことない。ドレスもよく似合うよ。南雲、お前、なんか綺麗になったな。ぐっと女っぽくなった」
思いがけない言葉に背中が熱くなる。
「今岡キャプテン、『女っぽくなった』はセクハラになりますよ」
横から水沢さんがひょいっと現れ、キャプテンを睨む。
「水沢くん、硬い事言うなよ。今日の南雲、美人だろう」
水沢さんがまじまじと私を見つめ、微かに頬を赤らめる。
「……元々お綺麗な方だと思っていましたが、南雲さん、今日は一段と美しいです」
ストレートな水沢さんの言葉に頬が熱くなった。
「水沢さんも、今日のスーツ素敵です」
水沢さんはグレーのスリーピースだった。
「……ありがとうございます」
照れくさそうに水沢さんが微笑んだ時、背中にドンッと強い衝撃が当たる。
「あ、すみません」
よろめきながら、振り向くと、ピンク色の華やかなドレス姿の綾音がいた。
「こちらこそ、ごめんなさい。あら、南雲さんも来たのね。てっきり自分の立場をわきまえて来ないかと思ってた」
私の顔を見て、バカにするような笑みを浮かべる。
「本当、図々しい。白鳥さんから婚約者を奪おうとしたのに、よく来れたものよ」
綾音の隣にはCAの若林さんもいた。
新人社員はパーティーに参加できないはずだったが、綾音に取り入って来たのかもしれない。
「若林さん、そんなこと言ったら可哀想よ。南雲さんもスカイクレスト航空にとって大切なパイロットなんですから。でも、今日は南雲さんにとって惨めな日になるでしょうね。お気の毒に」
フフッと笑い、綾音は若林さんと一緒に前のVIP席へと歩き出した。
「相変わらず、女王様だな。南雲、気にするなよ」
今岡キャプテンが苦々しい表情を浮かべる。
「大丈夫です。全く気にしていませんから」
私は笑顔を浮かべた。強がりでもなんでもない。コックピットで交わした隼人さんとの約束があるから、綾音の刺々しい言葉なんて、全く刺さらなかった。
ふと、前方にある一段高くなったVIP席に視線を向けると、高月社長の隣に、ネイビーのスリーピースを完璧に着こなした隼人さんの姿があった。
仕立ての良い上質なスーツがあまりにも格好良すぎて目で追ってしまう。
不意に隼人さんがこちらを向き、視線が合う。八百名の招待客がいる中で、隼人さんは迷う事なく、私の瞳を射抜き、口元を動かした。
――迎えに行く。
声は聞こえなくても、彼がそう口にしたのがハッキリ伝わる。途端に熱いものが込み上げて目頭が熱くなる。私は潤む瞳を隠すように、ゆっくりと隼人さんに向かって頷いた。
今日の招待客は八百名で、ほとんどがスカイクレスト航空の社員だ。
私は緊張しながら広いホールの扉を開けた。するとスリーピーススーツをビシッと決めた今岡キャプテンに声をかけられた。
「南雲、ドレス持っていたんだな」
今岡キャプテンが珍しいものを見るような視線を向けてくる。
「どうせ、私にはドレスよりもパイロットの制服の方が似合うって言うんでしょ?」
照れくささに軽口を叩くと、キャプテンが首を振る。
「そんなことない。ドレスもよく似合うよ。南雲、お前、なんか綺麗になったな。ぐっと女っぽくなった」
思いがけない言葉に背中が熱くなる。
「今岡キャプテン、『女っぽくなった』はセクハラになりますよ」
横から水沢さんがひょいっと現れ、キャプテンを睨む。
「水沢くん、硬い事言うなよ。今日の南雲、美人だろう」
水沢さんがまじまじと私を見つめ、微かに頬を赤らめる。
「……元々お綺麗な方だと思っていましたが、南雲さん、今日は一段と美しいです」
ストレートな水沢さんの言葉に頬が熱くなった。
「水沢さんも、今日のスーツ素敵です」
水沢さんはグレーのスリーピースだった。
「……ありがとうございます」
照れくさそうに水沢さんが微笑んだ時、背中にドンッと強い衝撃が当たる。
「あ、すみません」
よろめきながら、振り向くと、ピンク色の華やかなドレス姿の綾音がいた。
「こちらこそ、ごめんなさい。あら、南雲さんも来たのね。てっきり自分の立場をわきまえて来ないかと思ってた」
私の顔を見て、バカにするような笑みを浮かべる。
「本当、図々しい。白鳥さんから婚約者を奪おうとしたのに、よく来れたものよ」
綾音の隣にはCAの若林さんもいた。
新人社員はパーティーに参加できないはずだったが、綾音に取り入って来たのかもしれない。
「若林さん、そんなこと言ったら可哀想よ。南雲さんもスカイクレスト航空にとって大切なパイロットなんですから。でも、今日は南雲さんにとって惨めな日になるでしょうね。お気の毒に」
フフッと笑い、綾音は若林さんと一緒に前のVIP席へと歩き出した。
「相変わらず、女王様だな。南雲、気にするなよ」
今岡キャプテンが苦々しい表情を浮かべる。
「大丈夫です。全く気にしていませんから」
私は笑顔を浮かべた。強がりでもなんでもない。コックピットで交わした隼人さんとの約束があるから、綾音の刺々しい言葉なんて、全く刺さらなかった。
ふと、前方にある一段高くなったVIP席に視線を向けると、高月社長の隣に、ネイビーのスリーピースを完璧に着こなした隼人さんの姿があった。
仕立ての良い上質なスーツがあまりにも格好良すぎて目で追ってしまう。
不意に隼人さんがこちらを向き、視線が合う。八百名の招待客がいる中で、隼人さんは迷う事なく、私の瞳を射抜き、口元を動かした。
――迎えに行く。
声は聞こえなくても、彼がそう口にしたのがハッキリ伝わる。途端に熱いものが込み上げて目頭が熱くなる。私は潤む瞳を隠すように、ゆっくりと隼人さんに向かって頷いた。