クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない

エピローグ

 創立記念パーティーから三ヶ月後。
 隼人さんはパイロットを引退することになり、スカイクレスト航空の新社長として就任することが決まった。
 今日は隼人さんの機長としての最後のフライトで、今、パリのシャルルドゴール空港の駐機場に入り、エンジンが完全に停止した所だった。

「シャットダウン・チェックリスト、コンプリート」
 私はフライトに関わるすべての業務が終了したことを宣言する。
 乗客の降機もすべて終わり、機内はひっそりと静まり返っていた。
 ジャンプシートから立ち上がった佐藤キャプテンが、自分のフライトバッグを手に取り、フッと優しい笑みを浮かべて隼人さんの肩を叩いた。
「高月キャプテン、ラストフライトお疲れ様でした。素晴らしいランディングでした。南雲さん、後は新社長をよろしく」
「ありがとうございます。佐藤キャプテン」
 佐藤キャプテンは私にウインクを送り、重厚なセキュリティドアを開けて、コックピットを後にした。パタンとドアが閉まり、電子ロックがかかる。
 液晶ディスプレイの明かりが全て落とされ、コックピット内は薄暗いが、窓の外には夕暮れに染まるパリの美しいグラデーションの空が広がっていた。

「……終わったな」
 隼人さんは静かにキャプテンシートに身を沈め、操縦桿を愛おしそうに大きな手で撫でた。
「隼人さん、本当にお疲れ様でした。最高のフライトでした」
 胸がいっぱいになりながら声をかけると、隼人さんはゆっくりと私の方を向いた。
 ヘッドセットを外したその端整な顔立ちが、夕暮れの光に照らされ哀愁を感じさせる。

「瑞希、こっちへ来い」
「え……?」
 促されるままにシートベルトを外し、狭いコックピットの中で隼人さんの隣に立つと、隼人さんは私の手首を優しく引き、隼人さんの膝の上に私をすとんと座らせた。
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