クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
五話 契約書
ロサンゼルス国際空港から羽田空港へ帰国したのは、日本時間の午前五時だった。
いつものようにシップを最後に降りて、入国手続きを終え、オフィスへと続く関係者通路に出ると、白鳥綾音が待ち構えていた。
「隼人!」
鋭い声で隼人さんを呼んだ綾音は、通路を塞ぐように私たちの前に立った。
吊り上がった大きな目でこちらを睨みつける表情は、社内で見せるにこやかな顔とは別人のよう。しかし、それでも彼女は端整な顔立ちをしていて美人だ。隼人さんと一緒にいると美男美女のお似合いのカップルに見える。
「恋人がいるってどういうこと?」
「もう耳に入ったのか」
隼人さんが不敵な笑みを浮かべた。
「今、会社がどういう状態かわかっているの? 私と結婚して経営を支えていかなきゃいけないとは思わないの? 樹さんの志を継ぐのは隼人でしょ? 亡くなった彼の為にも私と結婚するのがスカイクレスト航空にとって一番いいのよ。それわかってる?」
腰に手を当て、綾音は隼人さんを見上げた。
すでに乗客の姿はないとはいえ、CAや佐藤キャプテンのいる前で、なりふりかまわず感情を爆発させる彼女に呆れる。こちらは十時間以上のロングフライトの後で、心身ともに疲れ切っているのだ。隼人さんのことを少しでも思うのなら、こんな風には騒ぎ立てないはずだ。
「白鳥さん、そういう話は今はやめた方が」
たまらず口を挟むと、綾音の大きな瞳が私を捉える。そして親の仇を見るような目を向けられた。
「コーパイの南雲瑞希さんね」
頷いた瞬間、綾音は大きく腕を振り上げた。
殴られる。そう思って目を閉じたが、衝撃は来なかった。
「いきなり何をする。少しは冷静になれ」
隼人さんの低く冷静な声が響いた。
いつものようにシップを最後に降りて、入国手続きを終え、オフィスへと続く関係者通路に出ると、白鳥綾音が待ち構えていた。
「隼人!」
鋭い声で隼人さんを呼んだ綾音は、通路を塞ぐように私たちの前に立った。
吊り上がった大きな目でこちらを睨みつける表情は、社内で見せるにこやかな顔とは別人のよう。しかし、それでも彼女は端整な顔立ちをしていて美人だ。隼人さんと一緒にいると美男美女のお似合いのカップルに見える。
「恋人がいるってどういうこと?」
「もう耳に入ったのか」
隼人さんが不敵な笑みを浮かべた。
「今、会社がどういう状態かわかっているの? 私と結婚して経営を支えていかなきゃいけないとは思わないの? 樹さんの志を継ぐのは隼人でしょ? 亡くなった彼の為にも私と結婚するのがスカイクレスト航空にとって一番いいのよ。それわかってる?」
腰に手を当て、綾音は隼人さんを見上げた。
すでに乗客の姿はないとはいえ、CAや佐藤キャプテンのいる前で、なりふりかまわず感情を爆発させる彼女に呆れる。こちらは十時間以上のロングフライトの後で、心身ともに疲れ切っているのだ。隼人さんのことを少しでも思うのなら、こんな風には騒ぎ立てないはずだ。
「白鳥さん、そういう話は今はやめた方が」
たまらず口を挟むと、綾音の大きな瞳が私を捉える。そして親の仇を見るような目を向けられた。
「コーパイの南雲瑞希さんね」
頷いた瞬間、綾音は大きく腕を振り上げた。
殴られる。そう思って目を閉じたが、衝撃は来なかった。
「いきなり何をする。少しは冷静になれ」
隼人さんの低く冷静な声が響いた。