クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 ロサンゼルスに到着し、スターリング邸でのパーティーへ向かう為に、ホテルのエレベーターを待っていた時、くたびれたTシャツ姿の南雲と遭遇した。
 一人でパーティーに行くと、女性が寄ってくるから厄介だった。だから彼女を女性除けに利用しようと思った。

 南雲をホテルのブティックに連れて行き、彼女が絶対に着なそうな真っ赤なドレスを選んだ。
 試着室から恥ずかしそうに出て来た彼女は想像以上に綺麗で、言葉を失った。パイロットの制服に隠れていた彼女の女性らしい美しさを発見した瞬間だった。俺の心拍数は上がり、体中が熱くなったが、彼女に動揺を悟られないように冷静さを務め、彼女とホテルを出て、タクシーに乗った。

 ハリウッドヒルズでのスターリング邸でのパーティー会場で、彼女の腰を抱き寄せた時、彼女を誰にも渡したくないと強く思った。だから、スターリングが白鳥副社長の娘、綾音の名前を出した瞬間、俺の中で彼女を契約恋人にするという計画が浮かんだ。
 表向きの理由は白鳥親子による政略結婚を回避する為だったが、本当は金銭的な困難を抱える彼女を助ける為と、彼女を傍に置きたかったからだ。

「彼女は俺の恋人です」

 スターリングにそう宣言した瞬間、俺が望んでいることだとも思った。
 パーティーの帰り、彼女が行きたがっていたハンバーガーショップで、俺は「契約恋人」という名の取引を持ち掛けた。
 クイック・イーツの件を盾にするやり方は自分でも卑劣だと思うが、そうでもしないと彼女が引き受けないと思った。
 その場で払った三百万円の報酬は彼女を救う為の対価であり、俺の傍に置く為の鎖だった。俺は彼女に酷い男だと思われても、パイロットとしての彼女の将来を守りたかったし、彼女にこれ以上の苦労を背負わせたくなかった。
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