クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない

七話 疑惑とキス

【南雲、メシつき合え。奢るぞ】
 ゴールデンウィークの翌週、仕事終わりに今岡キャプテンからメッセージが来ていた。場所は蒲田駅近くの居酒屋で、明日はオフなので丁度いい誘いだった。私はすぐに返信をし、重たいステイバッグとフライトバッグをアパートに置いてから、蒲田に向かった。
 居酒屋に到着したのは、午後七時過ぎで今岡キャプテンの名前を出すと、奥の個室に案内された。

「お連れ様お見えです」
 紺色の割烹着姿の店員はそう言って、個室の障子戸を開けた。今岡キャプテンの向かい側に水沢さんがいたから眉が上がる。

「南雲来たか。水沢くんの隣に座れ」
 私服姿の今岡キャプテンに促され、グレーのスーツの水沢さんの隣に座った。
「お疲れ様です。僕もお邪魔してすみません」
「いえ、多い方が楽しいですから」と口にしながら、少し緊張する。

 隼人さんの契約恋人になってから水沢さんと顔を合わせることがなかったから、何となく気まずい。水沢さんの耳にも隼人さんと私が恋人だって耳に入っているんだろうか。

「とりあえず、ビールでいいな」
 今岡キャプテンが生ビールを三つ注文すると、すぐに冷えたジョッキが運ばれてきた。
「じゃ、お疲れ」
 今岡キャプテンの掛け声でジョッキを持ち三人で乾杯する。
「南雲、高月隼人と付き合っているって、会社中で噂になっているが、どういうことだよ?」
 今岡キャプテンから遠慮のない質問が飛んで来て、ビールに激しく咽せた。
「げほっ、ごほっ」
「おいおい、大丈夫か? 全くこの父親代わりの俺に報告がないなんて、親不孝な娘め」
 いつもの調子で今岡キャプテンが笑い、私は慌てておしぼりで口元を拭いた。
「すみません。秘密にしておかないといけなかったので」
「秘密? もう社内中が知っているぞ。なあ、水沢くん」
 今岡キャプテンが水沢さんに視線を向けた。
 水沢さんが眼鏡のフレームを静かに直しながら口を開く。
「ええ、知らない人はいないと思います」
 やっぱり水沢さんも知っていたのか。
「……本当にすみません。最近までお互いの立場のこともあって秘密にしていたんです」
「社長の息子の隼人が広報の白鳥綾音と結婚させられそうになっているから、慌てて公表したのか?」
 今岡キャプテンの言葉を聞いて目を見開く。
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