クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない

八話 抱き枕と恋する気持ち

「瑞希、寝るぞ」
 隼人さんが当然のように私の腕を掴み布団に入ろうとする。

「あの、隼人さん、毎晩家に泊まりに来ているようなのですが」
「毎晩ではないだろう? ステイの夜もあるのだから」

 正確には四日連続だが、先週、初めて隼人さんが私の部屋に泊まって以来、この奇妙な添い寝は続いている。

「いくら契約恋人でも、適度なスキンシップの範疇を越えていると思うのですが」
 布団の上に正座し、Tシャツにスウェットというラフな姿の隼人さんを睨むと、隼人さんも正座で私に向き合う。
「理由は説明しただろう? 今岡キャプテンと水沢に疑われたのは、俺たちの間に恋人特有の空気が足りないからだ。それを補う為に一番適したスキンシップが同じ布団で寝ることだ。これは必要な訓練だと思ってくれ」
 隼人さんに断言されると必要なことのような気がするが、一人用の布団で長身の隼人さんと眠るのは、あまりにも窮屈だ。
「隼人さん、パイロットは健康管理も大事な仕事です。狭い場所でちゃんと眠れるんですか?」
「よく眠れている。先日健康診断だったが、全く問題はなかった」
「本当に?」
「本当だ。そんなことより寝るぞ」

 話は終わりとばかり隼人さんが布団に入り、仕方なくパジャマ姿の私もその隣に横になる。枕は二個に増えたけど、布団は一組だ。嫌でも肩が触れる。

 少しでも隼人さんから離れようと壁の方を向いた瞬間、いつものように逞しい腕が背中から回され、私はすっぽりと包まれる。背中に隼人さんの体温と、逞しい胸板や腹筋を感じてドキドキする。
 大学時代の彼氏とはそこまでの関係になっていなかったので、父を除いて、同じ布団で男性と寝るのは隼人さんが初めてだ。
 シャワーを浴びたばかりなのに、緊張でもう冷や汗が出てくる。

「安心しろ。一線は絶対に越えない。お前のことは抱き枕だと思っている」
 体を固くしていると、後ろから隼人さんの声がした。
「……抱き枕?」
 聞き返すと、クスッという笑い声がした。
「ああ。丁度いいサイズでよく眠れる」

 急に私一人で意識してドキドキしているのがバカみたいに思えた。そうだよね。隼人さんにとって私は気軽に同じ布団で眠れちゃうくらいの存在なんだよね。
「そうですか。どうせ私は色気がありませんからね」
 思わずいじけた言葉が出た。
「襲って欲しいのか?」
 からかうような響きにカチンと来る。
「私みたいな男女にそんな気には全くならないでしょ。無理しなくていいですよ」
 ケンカ腰に言い返すと、しーんとした空気に包まれる。
「……隼人さん、寝ちゃったの?」

 そっと首を後ろへ向けようとした瞬間、背中に回されていた腕に強い力がこもり、私の体は簡単に仰向けにひっくり返された。
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