クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 十五時間かけてほぼ徹夜で羽田に戻れば、瑞希は既にオフィスを出た後だった。
 電話すると、酔った声で水沢の名前を口にし、酒が強いかといきなり聞かれ、一方的に電話が切れた。気づいたら空港から瑞希のアパートに車を走らせていた。

 そしてアパート前に車を停めて待つこと一時間。タクシーが停まり、様子を窺うと、瑞希と水沢が一緒に降りて来て、カアッと頭に血が上った。

 俺は感情のまま車から降りて、階段を上ろうとした瑞希に声をかけた。瑞希は酔った真っ赤な顔で俺を不思議そうに見ていたが、その間抜けな顔を愛らしいと思ってしまった。今まで感じたことのない強い感情が全身を駆け巡り、俺は水沢の前で瑞希を独占するようにキスをした。

 瑞希の顔を見たら帰るつもりだったが、水沢を追い払った後も瑞希から離れられなかった。自分でもどうかしていると思うが、俺は瑞希の部屋に上がり込み、布団を敷き、瑞希を強引に抱き枕にした。それでやっと気持ちが落ち着いた。

 中村から『幻の彼』の話を聞いてから、ずっと不安で心細かったのは、瑞希が他の男に奪われるかもしれないという恐怖にずっと怯えていたからだと、彼女の顔を見て、ようやく自覚したのだった。
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