苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

SCENE6 過去との決別


 翌日、いつも通りに出社する。昨夜の自分を思い出すと、とても平常心ではいられなくなる。今日は、あえて頭を空っぽにして自分の席へと向かった。

 課長のいる部屋をそれとなく通り過ぎ、チームごとに仕切られている私の席へ向かうけれど、視線は彼を探してしまう。
 朝から課長の姿が見つからず、室内を移動する時に何度も遠目で探すけれど、仕事に忙殺され始めて、結局それどころではなくなってしまった。

 それなのに、昼休みになって気を抜いた瞬間、廊下で課長とすれ違う。視線を向けて言葉を交わそうとしたけれど、課長は別の社員に話し掛けられ、結局それも叶わない。用もないのに周囲をうろつくのもおかしなことだし、いいきっかけも思いつかない。

 それに課長の方も、あえて私を意識していないように見えた。
 仕事に集中しているはずが、昨夜の出来事ばかりを思い出し、幾度となく頭の中を巡っている。もらったご褒美はとても嬉しかったけれど、二人の時間が、あの夜だけで終わってしまうのはどこか切ない。



 その夜、残業を終えて、やっと自宅へ戻る。充電しようとスマホをいじっている最中、メッセージの着信音が鳴った。

《明奈、久しぶり~。あれから、問題のアンドロイド課長とはどうなった?》

< 115 / 193 >

この作品をシェア

pagetop