苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 普段なら、お互いの立場ばかりを気にして拒否されるはずなのに。なぜか今夜の課長は優しく温かい。身体中に熱が巡り、胸の奥がじんわりと切なくなるほど甘く疼いた。

 きっと、優しくしてくれるのはメンターだから……だよね。

「……すみません。ちょっと立ち眩みがしてしまって」

 今だけは、都合の悪い理由を全部アルコールのせいにしてしまおう。課長に支えられながら、ゆっくりとソファーに腰を下ろす。

 胸の奥で心臓が弾けそうに鼓動を打つ。この場所が薄暗いことにホッとする。必要以上に赤く染まった顔を見られたくはなかった。早く、この揺らいだ感情を元に戻さないと。そう思い、何度も呼吸を繰り返した。

 しばらくして、課長へ電車で帰れると伝えたものの、家までは送り届けると言って納得してくれない。ホテルの入り口にタクシーを呼んでもらい、結局、二人で乗り込むと、私を先に自宅まで送ってくれた。

「ありがとうございました」

 お礼を伝えると、ドアが閉まり、課長が乗るタクシーが角を曲がるまで見送る。
 マンションの入り口に立つと、周囲に冷たい風が吹き始める。どこか寂しい気持ちを消し去ろうと、澄んでいる夜空を思い切り見上げた。





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