苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
陽貴SIDE2
芦原を思わず抱きしめてしまった夜、送り届けた後に運転席へ戻り、放心状態のまま、しばらく車を走らせていた。鼓動が早くなり、ハンドルを握る手が熱くなる。心を落ち着かせようと、何度も深いため息をついた。
助手席に乗っていた芦原の頬に涙が伝うのを見て、何か強い衝動が胸の奥を突きあげる。
芦原を泣かせる奴は許せない。俺だったら、彼女を……。
彼女をどうする気だ?
自分の心に問いたくなる。
あの時……、ただ芦原を慰めるつもりが、いつの間にか体が勝手に動き、思わず彼女を抱きしめていた。
「いいよ。もう泣くな」
そう伝えて彼女を腕の中へ抱き寄せる。もっと真正面から彼女を守りたい。
この気持ちを抑えるのは、そろそろ限界か……。
その日はイレギュラーな仕事の関係で一日外を回り、会社へ戻った頃には終業時間が過ぎていた。そのまま役員室で軽い打ち合わせを済ませ、エレベーターでエントランスへ降りる。出口へ向かおうとして、自動ドア付近に見える芦原の姿に足を止めた。
静かなエントランスで、二人の会話が聞こえてくる。彼女の前には男性が立ちはだかり、どう見ても何かを迫っているように見えた。