苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「もう、やめてください!」
思わず、その声に思わず反応していた。もしかしてその相手は、彼女にとっては特別な存在かもしれない。だとしても、あんな風に傷つける男の態度は到底許すことができない。
感情に任せて、芦原を掴んでいる手を振りほどく。声を上げ、そのまま彼女の肩を抱き、自分の方へと引き寄せた。
相手の男は芦原を睨むように見つめている。こんな表情を向けている男が、どう考えても彼女を幸せにする存在には見えなかった。
これ以上、こんな奴に近寄らせてたまるか……。
いつの間にか本音がむき出しになり、思わず口に出てしまう。
「それなら、今後はきちんと覚えろ。俺の彼女だということを!」
自分の発言に驚く。その一方で、心のどこかでこの感情に少しずつ気付いてはいた。
決して触れてはならない。そう鍵をかけていたはずが、いつの間にか緩んでいることに気付く。
芦原の仕事を上司としてサポートしているつもりだったが、いつしか彼女の素顔に触れ、もっと笑顔にさせたくなっていた。
* * * * *
翌朝、出社して企画室のドアを開けると、いきなり目の前に芦原が立っていた。視線が重なると、あえて目を逸らす。昨夜のことが思い出され、一瞬感情が昂りそうになるのを必死で抑えた。