苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

SCENE8 今夜だけのメンター


 翌日、商品企画課での全体会議が行われ、現在の商品展開についてのことや、今後の見通しが話し合われた。チームとして分かれてはいるけれど、やはり全体でのリサーチや、アイデアの共有は大切だ。

 ただ、気になってしまうのは、Aチームの様子だった。なぜか後藤さんの姿が見えず、天野さんの表情がいつも以上に暗いように感じる。

 午後に入り、志田さんから裏の情報が伝わってきた。
 課長が振り分けたコンセプトシートの締め切りを、期限が過ぎたのに上がって来ず、その担当窓口だった後藤さんが体調不良で会社を休んでいるというのだ。

 通常、期限内にシートを提出し、その案を検討した後から企画が動くことになっているから、遅れが生じれば全体へと波及してしまう。

 志田さんが廊下から急いで戻ってくると、私に小声で教えてくれた。

「さっき課長が部長から呼び出されて、酷く怒ってるらしいよ。メンター制度を浸透させるはずの責任者が、仕事の振り分け方が悪いから彼女を追い詰めたんじゃないかって。Aチームの中もごたついてるみたい」

 嫌な予感がした。書類の関係で役員室のフロアーへ向かうと、部長とすれ違う。
 彼は薄くなった髪型を常に気にしながら、気難しそうに眉間に皺を寄せた。立ち止まって会釈をすると、部長は視線だけをこちらへ送り、不機嫌そうな顔で通り過ぎる。

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