君と終わった街で
第5章 「友達のままじゃいられない
土曜日だった。
雲ひとつない晴天。
空気は少し暖かくて、街には春の終わりみたいな匂いが漂っていた。
洸太は待ち合わせの十分前には駅へ着いていた。
落ち着かない。
スマホを見て。
時間を見て。
また人混みへ視線を戻す。
二十八にもなって、何やってるんだろうと思う。
でも、それくらい今日を楽しみにしていた。
「……早すぎじゃない?」
後ろから声がして、洸太は振り返る。
文姫が立っていた。
白の薄手ニット。
淡い色のロングスカート。
晴れた日の光が似合う人だ、と洸太は思った。
高校の頃より、大人っぽくなっている。
でも笑った時の雰囲気は変わっていない。
洸太は一瞬見惚れてしまって。
そのまま素直に口に出た。
「普通に綺麗だなって思って」
文姫が目を丸くする。
「いきなり?」
「……ごめん」
「ほんと変わってないね」
困ったみたいに笑う文姫を見て、洸太も少し笑った。
その瞬間。
文姫は胸の奥が少し熱くなるのを感じる。
高校の頃も、洸太は時々こうだった。
思ったことを、そのまま言う。
照れもなく。
駆け引きもなく。
だから困る。
二人は駅前を歩き出す。
昼は洸太が予約していたカフェへ行った。
窓際の席。
柔らかい日差し。
運ばれてきたパスタを見て、文姫が笑う。
「高校の頃よりちゃんとした店知ってるじゃん」
「失礼だな」
「昔なんてチェーン店ばっかだったのに」
「金なかったんだよ」
その会話が妙に楽しい。
昔みたいだった。
でも、少し違う。
高校生の頃より、ちゃんと相手の顔を見て話せている気がした。
食べ終わったあと、二人は街を歩いた。
雑貨屋へ入って。
本屋へ寄って。
途中で文姫が猫の置物を見つけて立ち止まる。
「これ可愛い」
そう言って笑う横顔を見ながら、洸太は思う。
ああ、やっぱ好きだな、と。
文姫は文姫で、少し戸惑っていた。
楽しい。
想像していたよりずっと。
洸太といると、自然に笑える。
気を張らなくていい。
無理をしなくていい。
しかも今日は、ずっと自分を見てくれている感じがした。
昔みたいに苦しそうじゃなく。
でもちゃんと、特別に扱われている感じがする。
それが嬉しかった。
夕方。
ゲームセンターの前を通った時だった。
洸太がふと立ち止まる。
「あ」
「なに?」
「覚えてる?」
ガラス越しに見えるクレーンゲーム。
高校の頃、文姫が欲しがっていたぬいぐるみを、洸太が必死に取ろうとしていたのを思い出す。
結局取れなくて、二千円くらい無駄にした。
文姫が吹き出す。
「懐かし」
「マジで下手だった」
「今も下手そう」
「やってみる?」
「えー」
そう言いながら、文姫は少し楽しそうだった。
結局、二人で店へ入る。
高校生みたいだった。
でも、その時間がたまらなく愛しかった。
文姫は思う。
たぶん自分は。
思っているよりずっと、洸太といる時間が好きなんだ、と。
雲ひとつない晴天。
空気は少し暖かくて、街には春の終わりみたいな匂いが漂っていた。
洸太は待ち合わせの十分前には駅へ着いていた。
落ち着かない。
スマホを見て。
時間を見て。
また人混みへ視線を戻す。
二十八にもなって、何やってるんだろうと思う。
でも、それくらい今日を楽しみにしていた。
「……早すぎじゃない?」
後ろから声がして、洸太は振り返る。
文姫が立っていた。
白の薄手ニット。
淡い色のロングスカート。
晴れた日の光が似合う人だ、と洸太は思った。
高校の頃より、大人っぽくなっている。
でも笑った時の雰囲気は変わっていない。
洸太は一瞬見惚れてしまって。
そのまま素直に口に出た。
「普通に綺麗だなって思って」
文姫が目を丸くする。
「いきなり?」
「……ごめん」
「ほんと変わってないね」
困ったみたいに笑う文姫を見て、洸太も少し笑った。
その瞬間。
文姫は胸の奥が少し熱くなるのを感じる。
高校の頃も、洸太は時々こうだった。
思ったことを、そのまま言う。
照れもなく。
駆け引きもなく。
だから困る。
二人は駅前を歩き出す。
昼は洸太が予約していたカフェへ行った。
窓際の席。
柔らかい日差し。
運ばれてきたパスタを見て、文姫が笑う。
「高校の頃よりちゃんとした店知ってるじゃん」
「失礼だな」
「昔なんてチェーン店ばっかだったのに」
「金なかったんだよ」
その会話が妙に楽しい。
昔みたいだった。
でも、少し違う。
高校生の頃より、ちゃんと相手の顔を見て話せている気がした。
食べ終わったあと、二人は街を歩いた。
雑貨屋へ入って。
本屋へ寄って。
途中で文姫が猫の置物を見つけて立ち止まる。
「これ可愛い」
そう言って笑う横顔を見ながら、洸太は思う。
ああ、やっぱ好きだな、と。
文姫は文姫で、少し戸惑っていた。
楽しい。
想像していたよりずっと。
洸太といると、自然に笑える。
気を張らなくていい。
無理をしなくていい。
しかも今日は、ずっと自分を見てくれている感じがした。
昔みたいに苦しそうじゃなく。
でもちゃんと、特別に扱われている感じがする。
それが嬉しかった。
夕方。
ゲームセンターの前を通った時だった。
洸太がふと立ち止まる。
「あ」
「なに?」
「覚えてる?」
ガラス越しに見えるクレーンゲーム。
高校の頃、文姫が欲しがっていたぬいぐるみを、洸太が必死に取ろうとしていたのを思い出す。
結局取れなくて、二千円くらい無駄にした。
文姫が吹き出す。
「懐かし」
「マジで下手だった」
「今も下手そう」
「やってみる?」
「えー」
そう言いながら、文姫は少し楽しそうだった。
結局、二人で店へ入る。
高校生みたいだった。
でも、その時間がたまらなく愛しかった。
文姫は思う。
たぶん自分は。
思っているよりずっと、洸太といる時間が好きなんだ、と。