君と終わった街で
ゲームセンターの中は、休日らしく賑やかだった。

電子音。

笑い声。

クレーンゲームのアナウンス。

高校の頃、二人でよく寄っていた空気と変わらない。

洸太は景品を見ながら、

「これ文姫好きそう」

と言って、猫のぬいぐるみを指差した。

文姫は吹き出す。

「子供扱いしてない?」

「してない」

「絶対してる」

そんなやり取りをしながら、洸太は百円玉を入れる。

アームが動く。

数秒後。

当然みたいに失敗した。

文姫が声を上げて笑う。

「下手!」

「うるさいな」

「全然成長してないじゃん」

その笑い声を聞いた瞬間。

洸太は少しだけ見惚れてしまう。

高校の頃も、文姫はこんなふうに笑っていた。

でも今は。

その笑顔を見られるだけで、胸が静かに満たされる。

昔みたいな焦りじゃない。

もっと穏やかで。

でも、ちゃんと特別な感情だった。

結局、三回目で奇跡みたいに景品が落ちる。

「え、すご」

文姫が驚いた顔をする。

洸太は少し得意げに笑った。

「成長しただろ」

「最後まぐれだったけどね」

「うるさい」

店を出たあと。

文姫は受け取ったぬいぐるみを見ながら、小さく笑う。

「なんかさ」

「ん?」

「今日ほんと変な感じ」

洸太が文姫を見る。

文姫は少し照れたみたいに視線を逸らした。

「高校の時に戻ったみたい」

その言葉に、洸太の胸が静かに熱くなる。

でも同時に、少し違うとも思った。

高校の頃より、ちゃんと文姫の隣にいられている気がする。

焦っていない。

無理に距離を縮めようとしていない。

だから今の方が、自然に笑える。

夕方になる頃には、空が少しオレンジ色へ変わり始めていた。

歩き疲れて、二人でベンチへ座る。

少しだけ風が気持ちいい。

文姫は前を向いたまま、小さく呟く。

「洸太といると、なんか安心する」

その声は、独り言みたいに小さかった。

でも洸太には、ちゃんと聞こえていた。

胸の奥が、ゆっくり熱くなる。

洸太は少し笑って、

「それ、この前も言ってたな」

と言う。

文姫は小さく笑う。

「だってほんとだから」

その瞬間。

洸太は思う。

ああ、自分はもう。

たぶん、戻れない。
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