隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~

第26話:追い詰められて

 古びた鉄の階段を激しく踏み鳴らす足音が、凍りついたアパートの室内に響き渡る。

 蒼乃は青ざめ、息を止めた。





――鍵を、閉めていない。





 この部屋をめちゃくちゃに荒らした暴漢たちが、もしずっと自分たちのことを見張っていたとしたら。

 あるいは、山梨の祖父の工房を襲ったような強盗が、今度は自分たちを狙って追いかけてきたのだとしたら。


 最悪の想像が頭をよぎる。

 身体中の血が引いていくような恐怖が襲ってきた。だが、立ち上がろうにも足に力が入らない。

 気づいたときには、すべてが遅すぎた。



ーーバァン




 激しい音を立てて、薄い扉が勢いよく開かれる。


「ひっ」


 小さな悲鳴が、蒼乃の喉の奥から短く漏れた。
 恐怖に身を竦め、膝の上の輝をこれ以上ないほど強く抱きしめる。


「蒼乃!」


 暗闇の向こうから飛び込んできたのは、肩を大きく上下させている昂輝だった。


 ぜえぜえと荒い呼吸を隠そうともせずに、彼は、板の間に座り込む蒼乃を凝視した。

 薄い外の光を背負ったその瞳は、暗がりの中でギラギラと異様な光を放っている。


「あ、蒼乃、どうし……」


 焦燥に駆られた昂輝が、迷わずこちらへ向かって手を伸ばしてくる。

 長い指先が、衣服に触れる。

 蒼乃は残された全ての力を振り絞って、その腕を激しく振り払った。
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