隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
自分は一体、どこへ行けばいいのだろう。
山梨へは帰れない。
怪我をした祖父にこれ以上の心労をかけるわけにはいかない。それに、祖父の元へ身を寄せれば、昂輝にはすぐに居場所が知れてしまうだろう。
昂輝。
あの写真の光景がフラッシュバックする。
胸が引き裂かれるように痛んだ。
家財も何もない、凍えるような暗闇。
「……行くところなんて、もう」
どこにも、ない。
こらえきれなくなった涙が、次から次へと溢れ出して頬を伝う。
輝を抱きしめる自身の腕に、ぐしゃぐしゃになった顔を埋めた。
「うっ……ふぅ……」
ダメだ。声を上げて泣けば、腕の中の輝が目を覚ましてしまう。それだけは絶対に避けたかった。
大切な息子に、こんなにも寒く、惨めで、救いのない夜の記憶など植え付けたくない。
この子だけは、温かい夢の中にいてほしかった。
ーードン、ガンガンガンッ
突然、静まり返った夜の静寂を破り、誰かが鉄製の外階段を激しく駆け上がってくる音が響く。
こんな夜中に……奥に住む大学生だろうか?
凄まじい足音に、蒼乃の心臓が激しく跳ね上がる。
輝が目を覚まさないよう、祈るような気持ちでその小さな身体をぎゅっと抱きしめた。
その直後。
静かな室内に、金属の擦れ合う音が響く。
ガチャリと、玄関の扉が外側から開かれた。
「ひっ……」
怯えきった悲鳴が、蒼乃の喉の奥を白く掠めて消えた。