隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~

第27話:試金石

「待ち伏せ……誰が……」


 蒼乃の唇から、掠れた声がこぼれ落ちた。


 先ほどまで身を置いていたアパートの寒々しさとは対照的に、マンションのリビングは適温が保たれている。

 それなのに、秘書が伝えた言葉の重みに、皮膚の裏側がゾワリと粟立った。

 自分の両肩を抱きしめるように腕を交差させたが、指先の震えは止まらない。


「十中八九、七井だろうな。輝の誘拐未遂、蒼乃の部屋を荒らした犯人、そして及川さんの件もおそらく……」


 昂輝の声は静かだが、その響きには有無を言わせぬ確信が満ちていた。

 点と線が、最悪の形で結ばれていく。

 保育園へ迎えに行く道すがら……不穏な笑みを浮かべていたあの女の影が、山梨で血を流した祖父の姿に重なり、蒼乃は目眩を覚えるような恐怖に包まれる。


 ふわりと、視界が浮き上がった。


 驚く隙もなく、昂輝の大きな腕が蒼乃の身体を軽々と抱き上げ、自らの膝の上へと誘う。
 密着した彼の胸板から、速く、力強い鼓動がまっすぐに伝わってくる。


「大丈夫、怖がらないで。犯人さえわかれば、対処のしようがある」


 耳元で囁かれる暖かな声と、衣服越しに伝わる強固な体温。


 四越百貨店での質流れ品大市で見かけた日、大黒堂の店長から『氷の宝石商』と噂されていると聞いた。

 あの時感じた冷たい影は、今の彼のどこにもない。

 彼に包まれているうちに、凍りついていた蒼乃の身体から、強張りがゆっくりと溶け出してゆく。
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