隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
 静寂が満ちるリビングで、昂輝の胸に額を預けたまま、蒼乃は顔を見上げた。

 ずっと心の奥底にくすぶらせていた、問い。

 七井晶子と会って以来、不安でたまらなかった気持ちを、いま、昂輝に話すべきだ。


「昂輝、もうひとつ聞いていい?」
「うん」


 自身の細い指先を見つめながら、その先の言葉を紡ぐ。


「輝の気持ちが落ち着いて、あの子が昂輝を父親だと受け入れられたら、そうしたら私たち……やり直すって、つまり……」


 その先を口にするのが怖くて、蒼乃は視線をさらに下へと落とした。

 住む世界の違う二人が、このまま同じ場所にいていいのだろうかという不安が、どうしても胸をよぎる。


 そんな躊躇いを払拭するように、昂輝の長く端正な指先が蒼乃の頬に触れた。

 そっと吸い寄せられるように、顔を上げさせられる。


「俺がはっきり言わなかったから不安にさせたんだな。蒼乃……」


 昂輝の瞳が、至近距離で蒼乃を真っ直ぐに捉えていた。


「輝が俺を受け入れてくれたらすぐ、すぐに結婚しよう」


 その言葉は、透明度の高い石のように曇りがない。


 しかし、喜びが湧き上がるよりも先に、蒼乃の胸には重い現実が押し寄せる。

 スマートフォンの画面で見た、あの右肩下がりの株価グラフ。
 御堂ジュエリーを囲む厳しい世間の目が、一気に脳裏へと浮かぶ。


「わ、私と結婚したら、会社の邪魔になる……」
「ならないよ」


 昂輝は即座に遮ったが、蒼乃の口から溢れる懸念は止まらない。

 同時に、瞳から涙がこぼれた。


「私と結婚したら、昂輝が、みんなに責められる」
「誰も責めない。そんなこと絶対にない」
「ゆ、許してもらえない……」


 身分違いだと、御堂家を危機に陥れた女だと、言われるかもしれない。

 そんな自分をきっと守ってくれるであろう彼が、家族や社員から非難される姿を、蒼乃は見たくなかった。

 弱気な言葉を重ねる蒼乃の唇を、昂輝の唇が強引に、しかしこの上なく優しく塞いだ。
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