隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~

第33話:エピローグ


「じいじ見て、ぼくがみがいたんだよ!」


 陽光が柔らかく差し込む御堂の本宅のリビングに、輝の弾んだ声が響く。

 絨毯の上に小さな膝をついた輝が、掌に乗せた小さな天然石を誇らしげに突き出している。

 その正面で車椅子に深く腰掛け、目を細めているのは昂輝の父である浩輝だ。

 もともと持病を患っていたが、更なる事件の心労により憔悴しきってしまったという。

 一時期は再入院もしたが、今、その顔には豊かな血色が戻り、穏やかな笑みが刻まれている。


「おお、上手にできたね輝くん。うん、筋が良い。さすが蒼乃さんと昂輝の子だ」


 浩輝はしわの寄った手で優しくその石を受け取り、窓からの光にかざして熱心に見つめた。
 石を介して、祖父と孫の間に温かい空気が流れていく。


 東京ジュエリーショーから半年と少し。

 蒼乃たち家族は今、これ以上ない平穏のなかにあった。


「これ、じいじにあげるね。はやく元気になって、じいじも山梨にきてね」
「うん、もう少し元気になったら……そうだな、今年の夏には行こう。なあ、昂輝」


 輝の言葉に目元を綻ばせた浩輝が、背後のカウンターに寄りかかっていた息子へと視線を向けた。

 ジャケットを脱ぎ、シャツの袖を腕まで捲り上げた昂輝は、柔らかな微笑みをもって、愛おしそうに家族を見つめている。


「いいんじゃないか。医者からも、少し遠出でもして体力をつけろと言われているし、山梨なら遠すぎない」
「あら、いいわね。温泉もあるし、ひと月くらい居ましょうよ」


 お茶の用意をしていた昂輝の母が、嬉しそうに会話に加わった。


「わーい! ばあば、ぼくとプールであそぼうね」


 輝が歓声を上げて跳ねる。

 その賑やかで、一切の遮りのない会話の応酬を聞きながら、ソファーに腰掛けていた蒼乃は、胸の奥に溢れる温かいものを噛み締めていた。

 これまでの長い、そして目まぐるしかった足跡が、走馬灯のように脳裏を駆け巡っていく。

 
 すべてが解決に向かった、あの事件の夜のことは、今でも鮮明に覚えている。
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