隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
輝の弾んだ声が響く。
昂輝の身体が一瞬だけ硬直したが、すぐにその顔に大きな喜びの笑みが広がった。
昂輝は迷いのない動きで床にかがみ込むと、輝の小さな身体を愛おしそうに両腕で抱き上げた。
「輝、どうして急に、パパって呼んでくれたんだ?」
昂輝の声は少し震えていたが、その表情はこれまでにないほど柔らかい。
輝は昂輝の広い首元に手を回し、拙い言葉を一生懸命に紡ぎ始めた。
「あのね、ぼくが、もしかしておじちゃんがパパなのかなってきいたらね、ひいじいがおしえてくれたの」
祖父は照れくさそうに視線を泳がせながら、再び頭を掻いている。
輝は昂輝の顔をじっと見つめながら、小さな唇を動かした。
「ぼくが、おじちゃんがパパがいいっておもったら、おじちゃんはパパなんだって。おじちゃんはパパじゃないとおもったら、ずっとおじちゃんのままでいいんだって」
蒼乃の胸が、締め付けられた。
本人が父だと望めば父になり、受け入れられなければ、おじちゃんのままで良い。
それは、突然現れた父親らしき存在に戸惑い、心細い思いを抱えていたであろう輝に対し、自分の意志で昂輝と向き合わせるための、祖父なりの温かい問いかけだったのだ。
「ぼく、おじちゃんがパパがいい」
輝は昂輝の顔を見つめ、周囲に響くような大きな声で言った。
「おじちゃん、ぼくのパパになって」
昂輝の喉が、ぐっと大きく動いた。
言葉を詰まらせ、目元を真っ赤に染めながら、彼は胸の奥から絞り出すようにして声を返した。
「おじちゃんは、輝のパパだよ。ずっと前から……輝が生まれるずぅっと前から、輝のパパなんだ」
昂輝の大きな手が、輝の背中を壊れ物を扱うかのように優しく、しかし強く抱きしめる。
蒼乃の目から、こらえきれなくなった涙が止めどなく溢れ落ちた。
頬の傷に涙が沁みたが、そんな痛みはどうでもよかった。
昂輝が、自身の潤んだ目元を隠すようにして顔を伏せ、輝を腕に抱いたまま、もう片方の大きな腕で蒼乃の身体を引き寄せる。
包帯の巻かれた蒼乃の腕ごと、三人分の体温が重なり合う。
昂輝の衣服から香る微かな彼の香りと、我が子の柔らかな温もりに包まれながら、蒼乃はただ、昂輝の胸の中で涙を流した。
淡く閉じられた瞳の奥で、あのサファイアが、毎日向き合った青いきらめきが、一層強く、瞬いたような気がした。