隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
第10話:守護
古ぼけた街灯が放つ淡いオレンジ色の光の下で、時が止まる。
白河蒼乃は、金縛りにあったかのように指一本動かすことができなかった。
足元から這い上がってくる震えが全身に伝わり、喉の奥がカラカラに乾いていく。
「久しぶりだな、蒼乃」
御堂昂輝の低い声が、鼓膜を直接揺らす。
五年間と変わらないはずのその声には、逃れようのない、深い重みが含まれているように聞こえる。
二人の間に漂う異様な空気を察知し、日向陽介が不審そうに眉をひそめた。
蒼乃の青ざめた横顔と、その視線の先に佇む完璧な身なりの男を交互に見つめる。
「知り合いか?」
陽介の落ち着いた声が、凍りついた空間をわずかに揺り動かす。
その声に弾かれたように、蒼乃は小さく震える唇を開いた。
「……どうして」
なぜ、ここが分かったのか。
いつから知られていたのか。
深い絶望が頭の中を支配し、視界が小刻みに揺れる。
昂輝の切れ長の瞳が、薄暗い路地の中でかすかに細められた。感情の読み取れない、しかしどこまでも静かなトーンで言葉を紡ぐ。
「四越にいただろう。俺が気付かないと思ったか?」
昂輝の射すくめるような視線が、蒼乃から、すぐ隣に立つ陽介へと移った。
夕暮れの過ぎた時刻。
静けさの中、自分と陽介の距離を測るかのように、彼の瞳の奥にぎらついた鋭い熱が灯る。
まるで陽介の存在そのものをそこから消し去ろうとするかのような、峻厳な眼差しだった。
その視線の鋭さに、蒼乃は背筋が凍りつくような恐ろしさを覚え、思わず身を固くする。
「二人で話そう、蒼乃」
願いではなく命令のような、低く拒絶を許さない響きを持っていた。
一歩、昂輝が距離を詰め、二人の間に漂う空気を割るように、長い腕を伸ばす。蒼乃の細い手首を掴もうとした。
その指先が触れる直前、蒼乃は恐怖に襲われる。
弾かれたように身体を翻した。
反射的にその手を強く振り払う。
バチ、と衣服の擦れる鈍い音が響いた。