隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~


 蒼乃は恐怖で震える膝を必死に突っ張り、強い口調ではねつけた。


「触らないでください。あなたと話すことなんてありませんから」


 拒絶の言葉をぶつけると、昂輝の整った顔立ちが、一瞬だけ、見たこともないほど険しく歪んだ。

 彼の瞳の中に、激しい怒りと焦燥が混ざり合ったような熱が黒く渦巻くのを、蒼乃は間近に見て息を呑んだ。


「あ、あの……何ですかね、急に。彼女も困ってますし、一旦、お帰りいただけませんか?」


 今度は陽介が、蒼乃を背に庇うようにして立ち塞がった。

 昂輝の視線が、遮るように現れた陽介の顔へと向かう。

 一切の温度が消えた冷ややかな目で睨む様子が、蒼乃の肌にも痛いほど伝わる。


「……きみは、何だ?」


 地を這うような重苦しい響きに、陽介もわずかに顎を引き、視線を逸らさずに応じる。


「何だ、とは?」
「蒼乃の何だ。何の権利があって割り込んでいる?」


 昂輝の言葉には、他者を寄せ付けない強い独占欲が隠しようもなく滲み出ていた。

 陽介は背筋を伸ばしたまま、静かに、しかしはっきりとした口調で告げた。


「……蒼乃の幼馴染みたいなもんです。よく知った仲です」



 蒼乃。


 名前を呼び捨てにする陽介の声に反応するように、昂輝の眉間にしわが寄せられる。

 昂輝がさらに一歩を踏み出そうとした、その時だ。

 彼の衣服のポケットから、電子音が静かな路地に鳴り響いた。


 昂輝は動きを止め、スマートフォンを取り出して画面に目を落とす。表示された名前に、彼の端正な眉間が忌々しげに深く曇った。

 昂輝はスマートフォンを握りしめたまま、蒼乃へと再び視線を戻した。

 その瞳には、逃げることを許さない、獲物を狙う猛獣のような、暗い色が浮かんでいた。


「……また、改めて」


 昂輝は踵を返し、少し遠くに停まっていた、車へと戻っていく。

 ドアが閉まる音がする。

 車が静かに路地を去っていくまで、蒼乃は息をすることすら忘れていた。









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