隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~


「今日は、本当にありがとうね」
「こちらこそ。輝くんが楽しそうで良かったよ」
「本当に。最終的に石を拾い始めたのには笑っちゃったけど」


 動物園で遊ぶうちに、だんだんと、動物よりも道端に落ちていた何の変哲もない小石を拾い始めてしまった輝の姿を思い出し、蒼乃は苦笑した。


「アレなー。本当に好きなんだな」


 陽介も目を細めて笑う。


「ああ、ここでいいよ、輝くん寝てるんだから、もう部屋に戻りな」


 アパートの敷地から広い道へ出たところで、陽介は言った。


「うん。陽介、今日は本当にありがと……」


 言葉を返そうとした蒼乃の視線が、ふと、アパートの前に広がる薄暗い路地の一角で止まる。


 誰かの視線を感じた。

 顔を上げる。

 古ぼけた街灯の下に、一人の男が佇んでいるのが目に入る。

 その人は、下町の景観にはおよそ場違いな、美しい仕立てのスーツを纏っていた。



 ドクン。


 心臓が激しく波打った。

 全身の血の気がまたたく間に引き、指先の感覚がすうっと消えていく。


 街灯の放つ淡いオレンジ色の光が、男の端正な顔立ちを、陰影深く浮かび上がらせていた。


 陽介が異変を察知して振り返るよりも早く、男はゆっくりと、こちらの世界をすべて支配するかのような雰囲気を纏いながら近づいてくる。

 その形の良い唇が、静かに開いた。


「久しぶりだな、蒼乃」


 御堂昂輝の低い声が、夜の始まりを告げる静寂の中に響き渡った。
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