似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
2契約結婚
宮倉に元気をもらった美空だったが、洋介と会う当日は、どうしても気が重かった。
(なんでもう一回会わなきゃいけないの……しかも前と同じ場所って、手抜きじゃない?)
けれど無視して両親に連絡だけされるのだけは、勘弁してほしい。両親は美空の初めての恋人である洋介にかなり好意的だし、彼と結婚するのだと、当然のように思っているのだから。
(どうせ浮気されたって言っても、うまく誤魔化されちゃうだろうしなー)
両親は人を疑うことを知らない。大好きな両親だったが、口の上手い洋介に太刀打ちできる人たちではない。
思い返せば、美空自身ですら彼の口車に乗せられていただけに過ぎないのだ。
「はぁ……よしっ。こういうのは長引くと駄目だし、ちゃっちゃと終わらせましょう」
美空は気合いを入れてホテルに足を踏み入れるのだった。
「よお、遅かったな」
「時間通りでしょ。それで、私を脅してまで話し合う理由は何?」
美空が苛立ちを抑えて低い声で尋ねると、洋介は不思議そうな顔をして首を傾げた。
「ずいぶん喧嘩腰だな。まだ反省していないのか?」
「反省? 何言ってるの? 反省すべきは貴方でしょう?」
座るなり突拍子もないことを言われ、つい声が大きくなる。
だが洋介は不思議そうな顔のまま「でもさ」と口を開いた
「美空が一方的なのも悪いだろう? 勝手に別れた気でいるかもしれないけど、俺は認めてない」
「別れるのに洋介の許可なんて要らないわ。付き合ったのはお互いが認めあった結果だけど、片方がそれを放棄したら別れるのは当たり前でしょ?」
美空がピシャリと言い放つと、洋介は「お前、変わったな」とこぼした。
「大体、私のシフトを無理矢理変えたことも怒ってるのよ。受付業務をさせるなんて嫌がらせのつもり? マネージャーにまで余計なことを言って!」
美空の苛立ちが再燃する。まるで湯沸し器のように頭のてっぺんまでイライラしていた。
だが洋介にはまるで伝わっていない。彼は「カリカリすんなよ」と両手を上げながらへらりと笑みを浮かべた。
「あーもう俺が悪かったよ。美空が俺に惚れ込んでいるから、いい気になっていたんだ。……これでいいだろ?」
「は?」
「でも今日来てくれたってことは、まだ俺のことが好きなんだろう?」
「はあ!?」
言ってる意味がまるで分からない。「待って、何言ってるの?」と言っても彼は止まらない。
「この間は驚かせて悪かったよ。美空にはまだ心の準備が出来ていなかったんだよな? だけど仕事もリセットして、俺の大切さが身に染みたはずだ。お前には俺が必要なはずだ。俺はそれを受け入れる覚悟がある」
美空が呆気にとられている間にとんでもない理論が展開されていく。
洋介は熱が入ったように徐々にヒートアップしていった。
「俺たち四年も付き合って、いろんなこと乗り越えてきたよな。俺、美空のことたくさん困らせたけど、これからは恩返し、していくから!」
「ちょ、ちょっと声が大きいよ」
大声で宣言するものだから、美空は慌てて彼を制した。
こんなホテルのラウンジで大声をあげるなんて恥ずかしすぎる。そう思った美空が周囲を確認すると、不思議な光景が見えた。
周囲の人が一斉に立ち上がったのだ。皆がこちらを見ている。異様だった。
(な、何!?)
美空が呆気にとられていると、洋介が近づいてきて美空の目の前で跪いた。
「改めて言うよ。俺と結婚してください」
熱を帯びた目が美空を見つめている。まるで最愛の人を前にしてるかのようだ。
洋介のその言葉を聞いた周囲の人々が一斉に「おめでとう」と言いながら拍手を始める。皆が満面の笑みを浮かべていた。
(えっ、何が起きてるの!?)
目の前の出来事はまるで悪夢だった。高熱の時に見る最悪の夢。
「美空、どうか俺の気持ちに応えてくれっ!」
洋介はどこから取り出したのか、一輪のバラを美空に差し出している。
美空は目が回りそうだった。
(プロポーズドッキリ? じゃない、フラッシュモブとかいうサプライズ? なんで別れ話してるのにこんなこと出来るの!? こ、断りたいんだけど……)
祝福ムードの中、早く洋介の手を取らないといけない気がしてくる。
ここで断ったら、周囲の人はどうなるんだろう。自分が悪者にされるのではないか。無理矢理舞台上にあげられた観客って、こんな気分なんだろうか……。
一瞬の間に脳裏に様々な考えが浮かんでは消えていく。
(ダメだ。とりあえず今、この瞬間をやり過ごすしかないのかな)
観念して手を伸ばしたその時――。
(なんでもう一回会わなきゃいけないの……しかも前と同じ場所って、手抜きじゃない?)
けれど無視して両親に連絡だけされるのだけは、勘弁してほしい。両親は美空の初めての恋人である洋介にかなり好意的だし、彼と結婚するのだと、当然のように思っているのだから。
(どうせ浮気されたって言っても、うまく誤魔化されちゃうだろうしなー)
両親は人を疑うことを知らない。大好きな両親だったが、口の上手い洋介に太刀打ちできる人たちではない。
思い返せば、美空自身ですら彼の口車に乗せられていただけに過ぎないのだ。
「はぁ……よしっ。こういうのは長引くと駄目だし、ちゃっちゃと終わらせましょう」
美空は気合いを入れてホテルに足を踏み入れるのだった。
「よお、遅かったな」
「時間通りでしょ。それで、私を脅してまで話し合う理由は何?」
美空が苛立ちを抑えて低い声で尋ねると、洋介は不思議そうな顔をして首を傾げた。
「ずいぶん喧嘩腰だな。まだ反省していないのか?」
「反省? 何言ってるの? 反省すべきは貴方でしょう?」
座るなり突拍子もないことを言われ、つい声が大きくなる。
だが洋介は不思議そうな顔のまま「でもさ」と口を開いた
「美空が一方的なのも悪いだろう? 勝手に別れた気でいるかもしれないけど、俺は認めてない」
「別れるのに洋介の許可なんて要らないわ。付き合ったのはお互いが認めあった結果だけど、片方がそれを放棄したら別れるのは当たり前でしょ?」
美空がピシャリと言い放つと、洋介は「お前、変わったな」とこぼした。
「大体、私のシフトを無理矢理変えたことも怒ってるのよ。受付業務をさせるなんて嫌がらせのつもり? マネージャーにまで余計なことを言って!」
美空の苛立ちが再燃する。まるで湯沸し器のように頭のてっぺんまでイライラしていた。
だが洋介にはまるで伝わっていない。彼は「カリカリすんなよ」と両手を上げながらへらりと笑みを浮かべた。
「あーもう俺が悪かったよ。美空が俺に惚れ込んでいるから、いい気になっていたんだ。……これでいいだろ?」
「は?」
「でも今日来てくれたってことは、まだ俺のことが好きなんだろう?」
「はあ!?」
言ってる意味がまるで分からない。「待って、何言ってるの?」と言っても彼は止まらない。
「この間は驚かせて悪かったよ。美空にはまだ心の準備が出来ていなかったんだよな? だけど仕事もリセットして、俺の大切さが身に染みたはずだ。お前には俺が必要なはずだ。俺はそれを受け入れる覚悟がある」
美空が呆気にとられている間にとんでもない理論が展開されていく。
洋介は熱が入ったように徐々にヒートアップしていった。
「俺たち四年も付き合って、いろんなこと乗り越えてきたよな。俺、美空のことたくさん困らせたけど、これからは恩返し、していくから!」
「ちょ、ちょっと声が大きいよ」
大声で宣言するものだから、美空は慌てて彼を制した。
こんなホテルのラウンジで大声をあげるなんて恥ずかしすぎる。そう思った美空が周囲を確認すると、不思議な光景が見えた。
周囲の人が一斉に立ち上がったのだ。皆がこちらを見ている。異様だった。
(な、何!?)
美空が呆気にとられていると、洋介が近づいてきて美空の目の前で跪いた。
「改めて言うよ。俺と結婚してください」
熱を帯びた目が美空を見つめている。まるで最愛の人を前にしてるかのようだ。
洋介のその言葉を聞いた周囲の人々が一斉に「おめでとう」と言いながら拍手を始める。皆が満面の笑みを浮かべていた。
(えっ、何が起きてるの!?)
目の前の出来事はまるで悪夢だった。高熱の時に見る最悪の夢。
「美空、どうか俺の気持ちに応えてくれっ!」
洋介はどこから取り出したのか、一輪のバラを美空に差し出している。
美空は目が回りそうだった。
(プロポーズドッキリ? じゃない、フラッシュモブとかいうサプライズ? なんで別れ話してるのにこんなこと出来るの!? こ、断りたいんだけど……)
祝福ムードの中、早く洋介の手を取らないといけない気がしてくる。
ここで断ったら、周囲の人はどうなるんだろう。自分が悪者にされるのではないか。無理矢理舞台上にあげられた観客って、こんな気分なんだろうか……。
一瞬の間に脳裏に様々な考えが浮かんでは消えていく。
(ダメだ。とりあえず今、この瞬間をやり過ごすしかないのかな)
観念して手を伸ばしたその時――。