似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
3告白
 美空は仁美と会って以降、何となく優斗を避けるようになってしまった。
 もともと時間が合う方が稀だったので、避けるのは簡単だった。

 けれど優斗が眠れているかが不安だった美空は、食事だけは作って置いておくことにした。
 簡単な置き手紙と料理。それらはいつも通り。ただ顔を合わせないだけ。

 優斗はそれに対して何も言ってこなかった。
 朝になると、置き手紙にお礼に言葉が綴られており、食器が片付けられている。
 今までと何も変わらなかった。

(顔を合わせていないことも気づいていないかも。優斗さんは忙しいから)

 それは美空にとっては好都合だった。

(私たちは契約結婚した仲だもの。このくらいの距離感がちょうど良いんだわ)

 そう思っていた。



 いつものように優斗と鉢合わせをしないように早めに自室で休んでいると、玄関が開く音がした。

(帰ってきた。今日は早いのね。おかえりなさい)

 心の中で挨拶をして素早く電気を消し、布団に潜り込む。
 彼が自室に入るまで息を潜めている間に自分も眠りにつく。それが最近の日課だった。
 それなのに――。

「美空? 起きてる?」

 ドアがノックされ、控えめな優斗の声が部屋に響いた。
 突然の事に驚いて、口を塞ぐ。

(ど、どうして急に?)

 そのままじっと黙っていると、再び彼の声がした。

「話がしたいんだ」

 優斗の優しい声に導かれるように美空は起き上がった。

(私も優斗さんとお話ししたい。会って顔が見たい)

 けれど返事をしたくても声が出ない。

『病院のために別れてくれ』
『美空と離婚して仁美と結婚することになった』
『もう終わりにしよう』

 優斗がそう言ってくるのではないか。そんな不安が頭をよぎり、動くことが出来なかった。

(そんなはずない。優斗さんは仁美さんと結婚しなくても大丈夫だって……)

 彼を信じきれない自分自身に嫌悪感が募る。
 美空の脳内はめちゃくちゃだった。

「……おやすみ」

 優斗の足音が離れていく。
 美空が動けたのは、彼が自室に入って扉を閉めた音が聞こえた後だった。

 そっと扉を開けて廊下を覗く。当然優斗の姿はない。

「ごめんなさい」

 美空は小さく呟くと、再び扉を閉めた。



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