似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~

※優斗視点

***

 リストバンドを受け取った優斗は、まず館内の散策をした。
 美空がどんなところで働いているのか、単純に興味が湧いたからだ。

(結構広いな。美空と話したくてここまで来てしまったが、結構良い施設だ)

 最近、美空が自分を避けているのは気づいていた。

『あの、明日片付けるので流しに置いておいてください。私はもう寝ます。おやすみなさいっ』

 あの日、仁美の件について元婚約者が迷惑をかけたことを謝罪しようとしたのだが、謝る間もなく彼女は去ってしまった。
 深夜だったこともあり翌日以降に話そうと思っていたのだが、その日以降、優斗に謝罪の機会はやってこなかった。

 美空は優斗と顔を合わせないように徹底していたからだ。

 最初は怒っているのかと思っていたが、毎日の置き手紙を読むに、どうやら違うらしいということだけは分かった。
 彼女の置き手紙はいつも、優斗への気遣いでいっぱいだったから。

(仁美は一体何を吹き込んだんだ……。美空がもう少し落ち着くのを待つべきか?)

 そんな風に考えて、様子をうかがうことにしたのだが、一週間を過ぎたあたりで優斗は我慢できなくなっていた。

(美空と会って話がしたい。あの笑顔が見たい……。こんなにも近くにいるのに、声さえ聞けていない)

 このまま美空は、一生顔を合わせてくれないかもしれない。
 良からぬ想像が優斗の脳裏を掠める。

 そして限界を迎えた優斗は、仕事終わりに彼女の部屋を部屋をノックしたのだ。
 帰ってきた時、部屋の電気がついていたのが見えたのに、全く返事がない。

 無視されたという事実は、優斗にとって想像以上にショックだった。

(俺がもっと早く話していたら……いや、まだ遅くないはずだ)

 居ても立ってもいられなくなった優斗は、今日、美空の職場であるジムに訪れたのだった。



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