似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
エピローグ
それから数ヶ月後。
美空は小野リハビリ総合病院に来ていた。
「皆さん、今日は運動促進のために先生に来ていただきましたよー! 宮倉美空先生です」
「よろしくお願いします。今日は楽しく身体を動かしてみましょう」
円形に広がっている患者の中心に立った美空は、笑顔で挨拶をした。
***
「仁美さん、私に講師をやらせてください」
ゼスティアを辞めた日、美空は仁美に連絡をしていた。
仁美は喜んで了承してくれ、今では週に一回、特別講師やイベント講師として病院を訪れる日々だ。
働き始めた当初は病院内でスクラブに身を包むだけで心臓がバクバクとしていたが、二回、三回と続けていく内に嫌な緊張感は減っていった。
「先生の体操は楽しくて良いね」
「この歳になるとリハビリって億劫なんだけどよ、先生には敵わねえ」
「もう少し頑張ろうって気になるんだよ」
参加する患者も笑顔で取り組んでくれる人が多く、一緒にやってくれる理学療法士の人たちも親切だ。
(私、昔の夢を叶えたんだな)
一度は諦めた理学療法士としての仕事。
形は変わってしまったが、こうしてリハビリに携われるのは幸せだった。
仕事終わりに帰り支度をしていると、「先生」と声をかけられた。
振り返ると、小野がニコニコとした笑顔で立っていた。
「お疲れさま」
「小野さん! お疲れさまです。……でも先生はやめてください」
「いやいや、今じゃ立派なうちの先生の一人だよ。今日もありがとうね。優斗くんは元気かい?」
「はい。最近は病床問題も解消したって、喜んでいましたよ」
美空の言葉に小野は顔をほころばせる。
「うちもお陰さまでしばらく安泰だよ。今は仁美も色々奔走してくれている。それもこれも先生のおかげだ。ありがとう」
「私は何もっ……むしろお仕事をいただいて、ありがたいと思っているんですよ」
「ははは、そうかね。じゃあ一挙両得だったということにしておこうか」
「はいっ」
小野と別れを告げて病院から家に帰宅する美空は、スキップしたい気分だった。
家に帰り、郵便受けを確認すると、手紙が一通入っている。
「誰かしら? あ、お義母様だ」
優斗の母とは文通をする仲になっていた。
時折優斗の幼い頃の写真を送ってくれたり、優斗の父が業務提携の資料をご機嫌で読んでいたこと等を知らせてくれるのだ。
(後で返事を書かないとな)
手紙を自室に置いて、美空は急いで着替え始める。
今からヨガのオンラインレッスンなのだ。
優斗に空けてもらった部屋にヨガマットとカメラをセットして、パソコンを起動する。
「美空先生! お願いします」
「今日もよろしくお願いします、梨子ちゃん」
画面の奥で梨子が手を振っている。
彼女は、オンラインレッスンの最初の受講者だった。
今ではすっかり常連だ。
「最近、美空先生のレッスンは空きがなくて予約するのも一苦労ですよ」
「嬉しいわ。また枠を増やしたら大丈夫だと思うけど……」
ありがたいことにオンラインレッスンの受講者は少しずつ増えている。
最近はグループレッスンでも受けたいという声があり、レッスンの枠を増やしているところだ。
「っていうか、梨子ちゃんにだったら個人的に教えるのに」
「駄目ですよ。生徒一号の座は、誰にも渡しません!」
「ふふふっ、じゃあ始めましょうか」
「はーい」
梨子はいつも楽しそうにヨガをしている。
彼女を教えている時間は、美空も幸せだった。
(こんな日が来るなんて……)
美空は幸せを噛み締めながら大きく深呼吸をした。
美空は小野リハビリ総合病院に来ていた。
「皆さん、今日は運動促進のために先生に来ていただきましたよー! 宮倉美空先生です」
「よろしくお願いします。今日は楽しく身体を動かしてみましょう」
円形に広がっている患者の中心に立った美空は、笑顔で挨拶をした。
***
「仁美さん、私に講師をやらせてください」
ゼスティアを辞めた日、美空は仁美に連絡をしていた。
仁美は喜んで了承してくれ、今では週に一回、特別講師やイベント講師として病院を訪れる日々だ。
働き始めた当初は病院内でスクラブに身を包むだけで心臓がバクバクとしていたが、二回、三回と続けていく内に嫌な緊張感は減っていった。
「先生の体操は楽しくて良いね」
「この歳になるとリハビリって億劫なんだけどよ、先生には敵わねえ」
「もう少し頑張ろうって気になるんだよ」
参加する患者も笑顔で取り組んでくれる人が多く、一緒にやってくれる理学療法士の人たちも親切だ。
(私、昔の夢を叶えたんだな)
一度は諦めた理学療法士としての仕事。
形は変わってしまったが、こうしてリハビリに携われるのは幸せだった。
仕事終わりに帰り支度をしていると、「先生」と声をかけられた。
振り返ると、小野がニコニコとした笑顔で立っていた。
「お疲れさま」
「小野さん! お疲れさまです。……でも先生はやめてください」
「いやいや、今じゃ立派なうちの先生の一人だよ。今日もありがとうね。優斗くんは元気かい?」
「はい。最近は病床問題も解消したって、喜んでいましたよ」
美空の言葉に小野は顔をほころばせる。
「うちもお陰さまでしばらく安泰だよ。今は仁美も色々奔走してくれている。それもこれも先生のおかげだ。ありがとう」
「私は何もっ……むしろお仕事をいただいて、ありがたいと思っているんですよ」
「ははは、そうかね。じゃあ一挙両得だったということにしておこうか」
「はいっ」
小野と別れを告げて病院から家に帰宅する美空は、スキップしたい気分だった。
家に帰り、郵便受けを確認すると、手紙が一通入っている。
「誰かしら? あ、お義母様だ」
優斗の母とは文通をする仲になっていた。
時折優斗の幼い頃の写真を送ってくれたり、優斗の父が業務提携の資料をご機嫌で読んでいたこと等を知らせてくれるのだ。
(後で返事を書かないとな)
手紙を自室に置いて、美空は急いで着替え始める。
今からヨガのオンラインレッスンなのだ。
優斗に空けてもらった部屋にヨガマットとカメラをセットして、パソコンを起動する。
「美空先生! お願いします」
「今日もよろしくお願いします、梨子ちゃん」
画面の奥で梨子が手を振っている。
彼女は、オンラインレッスンの最初の受講者だった。
今ではすっかり常連だ。
「最近、美空先生のレッスンは空きがなくて予約するのも一苦労ですよ」
「嬉しいわ。また枠を増やしたら大丈夫だと思うけど……」
ありがたいことにオンラインレッスンの受講者は少しずつ増えている。
最近はグループレッスンでも受けたいという声があり、レッスンの枠を増やしているところだ。
「っていうか、梨子ちゃんにだったら個人的に教えるのに」
「駄目ですよ。生徒一号の座は、誰にも渡しません!」
「ふふふっ、じゃあ始めましょうか」
「はーい」
梨子はいつも楽しそうにヨガをしている。
彼女を教えている時間は、美空も幸せだった。
(こんな日が来るなんて……)
美空は幸せを噛み締めながら大きく深呼吸をした。