似た者同士の契約婚 ~結婚しないと宣言した日に出会った相手は、不眠の心臓外科医でした~
 そして夜。美空はテーブルの料理を温め直しながら、優斗の帰りを待っていた。
 カチャリと玄関の開く音が聞こえた美空は小走りで玄関へと向かった。

「ただいま。すまない、遅くなった」
「おかえりなさい。お疲れさまでした。ご飯、用意できていますよ」
「助かるよ」

 疲れた顔をしていた優斗が顔を明るくする。
 美空が新しい仕事を始めた今でも、二人は時間が合えば、こうして食卓を囲んでいた。
 食後には二人並んでソファーに座り、他愛もない話をする。

「そういえば、お義母様からお手紙をもらったんですよ。お義父様が今度の小野リハビリ総合病院への視察にウキウキしてるって」
「はは、母さんの情報は適当だからな」
「最近、小野さんとお義父様は仲が良いみたいですし、あながち嘘でもないと思いますよ」
「そうだといいんだけどな」

 優斗はそう言いながらも、どことなく嬉しそうだ。
 業務提携を無事に乗り越えた優斗は、父との関係が修復されつつある。

(お義母様と一緒に、二人の仲を見守るのが楽しみなんだけど、これはまだ内緒にしておかないとね)

 美空はひっそりと笑みを浮かべる。

「両親の話より、美空とのことを話したいんだけど。どこに行きたいか決めてくれた?」

 優斗が身体ごと美空の方を向き、頬をするりと撫でた。

「あ……し、新婚旅行の話ですか? もう新婚でもないのに、本当にお休み取れるんですか?」
「絶対に取る。もう根回しはしてある」

 自信たっぷりに微笑む優斗の色気に、美空の頬が熱くなる。

「候補でいただいてたドイツは、すっごく素敵だなって思います。でも、わ、私は優斗さんと二人で過ごせるなら、どこだって楽しいと思います……」

 美空がはにかむと、優斗の唇がそっと美空の唇に触れた。

「俺もそう思う」

 二人は笑い合うと、そのままぎゅっと抱き締め合う。
 見上げると、彼の瞳には美空の笑顔が映っていた。

「優斗さんに出会えて、本当に良かったです」

 美空がそう言った瞬間、優斗に再び唇を奪われる。
 今度は深く、触れているところ全てから、彼の熱が伝わってきた。

「んっ……」

 美空の息が乱れた頃、ようやく優斗が口を離した。

「俺もだよ」

 満足そうな微笑みを浮かべている彼を見ていると、愛おしくてたまらない。

「愛してます」
「愛してるよ」

 二人の声が重なり、また笑い合った。



【完】
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