御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う

小夜莉の事情

 あれから三人はエレベーターに乗り込むと、ホテルの上層階にあるフレンチレストランへ向かった。
 目的階に到着しエレベーターの扉が開いた瞬間、目の前の開けたフロアの窓から綺麗な夜景が広がり、小夜莉は母と共に思わず声を上げる。
 そんな小夜莉たちにくすりと肩を揺らすと、雅人は慣れた様子でレストランへと向かった。
 雅人が入り口に立った途端、サッと紳士的な印象のスタッフが現れる。

「お待ちしておりました、御子柴様。本日はご来店誠にありがとうございます。すぐお席にご案内を――」

 男性スタッフはまるで雅人が来ることを知っていたかのようにそう言ったが、雅人がそれを軽く制止するように片手を上げた。

「いや、先にこちらの席へ案内を。神崎で予約を入れているはずです」

 雅人はそう言うと、チラッと小夜莉に目線を向ける。
 小夜莉は緊張しながらこくこくと首を縦に振った。

「少々お待ちください」

 男性はそう言うと、受付のカウンターに置いてある予約リストに目を通す。そして何事もなかったかのように、恭しく頭を下げた。

「お待たせいたしました。お席はこちらになります」

 男性に案内されるまま、小夜莉は母と共にドキドキとしながらレストラン内を進む。
 ゆったりとしたクラシック音楽が流れる店内は、ややオレンジ系の落ち着いたライトが室内を照らし出し、各テーブルに置かれたキャンドルもそれに合わせるようにゆらゆらと揺れている。
 笑顔で会話を楽しみながら食事をしているのは、紳士淑女と呼ばれそうなハイソな人々に見えた。
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