御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
「さ、小夜莉……お母さん、めまいがしてきたわ」

 すると腰が引けた母が小夜莉の袖をキュッと引く。

「だ、大丈夫よ。きっと……」

 小夜莉は自分に言い聞かせるようにドギマギと小さく声を出した。
 このレストランは両家の顔合わせなど、格式あるイベントごとにおススメとインターネットに書いてあったため予約をしたが、まさかこんなセレブなレストランだとは思わなかった。

(なんだか周りのひとの目線も痛い気がする……)

 小夜莉がそんなことを思った時、先に進んでいた雅人がこちらを振り返った。

「さぁこちらへ」

 雅人はそう言うと、優しく手を差し出す。
 その姿があまりに紳士的で、小夜莉は思わず母と一緒にぽーっとなってしまった。
 雅人に促されるように、小夜莉は母と共に席につく。
 まるでお姫様のような扱いに、いつしか周りの目線もうっとりとしているように感じられた。

 食前酒に雅人が選んでくれたキールロワイヤルを飲みだした頃、ようやく緊張の糸がほぐれたのか、母のマシンガントークが始まる。
 それは実家がある田舎の世間話だったり、小夜莉の子供の頃の話だったりしたが、雅人は楽しそうに聞いてくれた。
 コース料理もメインディッシュに入った頃、調子に乗った母がワインをボトルで頼みたいと言い出し、慌てて止めに入る小夜莉の横で、雅人がスマートにソムリエに頼む場面もあった。
< 24 / 135 >

この作品をシェア

pagetop