御曹司社長は恋に臆病な契約妻を極上の愛で囲う
突然のプロポーズ
小夜莉が婚約者を演じてからしばらくして、聞いていた通り雅人の御子柴化学社長就任が大々的に発表された。
あの御曹司がトップになるという話題は、研究所内でも大騒ぎになる程で、それから半月が経つ今でもまだ勢いはおとろえない。
いつ研究所に新社長が視察に来るのかと、みんな日々ソワソワとしながら過ごしていた。
「あぁ早くお会いしたいわぁ」
「もしかしたら御曹司に見初められるとかある?」
「あるかも! どうしようー」
とくに若い研究員の色めき方は半端じゃない。
皆の妄想はどんどん膨らみ、今ではまるで神様か仏様かぐらいのあがめようだ。
(これじゃあ実際にここに来たら大騒ぎどころの話じゃないな)
小夜莉はふと雅人の顔を思い浮かべる。
確かに雅人は明らかに一般人とは違うオーラを放っていたし、とんでもない美男子だった。でも人に接する時の姿勢や話し方はとても穏やかで丁寧だし謙虚にすら感じたのだ。
(だから怖くなかったのかな?)
小夜莉はそんなことを考えながら顕微鏡を覗き込む。今日も誰から話しかけられるでもなく、ただ黙々と研究を続けていた。
午後になり小夜莉がデータをパソコンに入力していた時、外に出ていた所長が戻ってくる。五十代半ばの所長は撫でつけられた髪を、手でさらに薄く延ばすと「神崎くん」と珍しく大きな声を出した。
「今社長がこちらに来ているんだ。新主任に挨拶したいと言ってる。すぐに社長室に行ってくれ」
すると〝社長〟という言葉に、一気に研究室内が悲鳴に包まれた。
「所長! 社長がお見えなんですか⁉」
「私たちもご挨拶したいです!」
でもその声は所長のギロリとした厳しい視線に一蹴される。
「挨拶に行くのは神崎くんだけだ。早く行きたまえ!」
所長に睨みつけられ、慌てて立ちあがった小夜莉は、頭にかぶっていた白い作業帽だけを外すと小走りで扉へと向かった。
「ずっるーい」
「でもさ、能面女史だったら社長に見初められるわけないし、安心じゃない?」
「確かにね」
背中でひそひそと声が聞こえたが、小夜莉は聞こえないフリをしてすぐに社長室へと向かった。
あの御曹司がトップになるという話題は、研究所内でも大騒ぎになる程で、それから半月が経つ今でもまだ勢いはおとろえない。
いつ研究所に新社長が視察に来るのかと、みんな日々ソワソワとしながら過ごしていた。
「あぁ早くお会いしたいわぁ」
「もしかしたら御曹司に見初められるとかある?」
「あるかも! どうしようー」
とくに若い研究員の色めき方は半端じゃない。
皆の妄想はどんどん膨らみ、今ではまるで神様か仏様かぐらいのあがめようだ。
(これじゃあ実際にここに来たら大騒ぎどころの話じゃないな)
小夜莉はふと雅人の顔を思い浮かべる。
確かに雅人は明らかに一般人とは違うオーラを放っていたし、とんでもない美男子だった。でも人に接する時の姿勢や話し方はとても穏やかで丁寧だし謙虚にすら感じたのだ。
(だから怖くなかったのかな?)
小夜莉はそんなことを考えながら顕微鏡を覗き込む。今日も誰から話しかけられるでもなく、ただ黙々と研究を続けていた。
午後になり小夜莉がデータをパソコンに入力していた時、外に出ていた所長が戻ってくる。五十代半ばの所長は撫でつけられた髪を、手でさらに薄く延ばすと「神崎くん」と珍しく大きな声を出した。
「今社長がこちらに来ているんだ。新主任に挨拶したいと言ってる。すぐに社長室に行ってくれ」
すると〝社長〟という言葉に、一気に研究室内が悲鳴に包まれた。
「所長! 社長がお見えなんですか⁉」
「私たちもご挨拶したいです!」
でもその声は所長のギロリとした厳しい視線に一蹴される。
「挨拶に行くのは神崎くんだけだ。早く行きたまえ!」
所長に睨みつけられ、慌てて立ちあがった小夜莉は、頭にかぶっていた白い作業帽だけを外すと小走りで扉へと向かった。
「ずっるーい」
「でもさ、能面女史だったら社長に見初められるわけないし、安心じゃない?」
「確かにね」
背中でひそひそと声が聞こえたが、小夜莉は聞こえないフリをしてすぐに社長室へと向かった。