エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!

約束は永遠に(滉太郎サイド)

 俺のスマホに仁奈が自宅へ帰ったと通知がきたのは、午後三時。仕事を早退したのかと思い、俺は眉根を寄せた。

 仁奈が不審者と遭遇して以来、彼女のスマホにGPSアプリをインストールしてもらい、自宅に無事帰れたかどうかを毎日確認している。仁奈はつけられるのに心当たりはないと言っていて男の目的は不明だが、万が一のことが仁奈に降りかかった時はすぐ助けに行けるようにするためだ。

 居場所がわかるからといって、むやみやたらと監視しているわけではない。本当は仁奈が心配すぎて彼女の行動は逐一把握しておきたいが、彼女から束縛男だと認識されて嫌われることは避けたいので我慢している。

【家に帰ったみたいだけど、具合が悪いのか?】

 そう送ろうとして思いとどまった。これじゃあ彼女の行動を常時監視している気色悪い男だ。

 仁奈に引かれたくないが心配は心配なので、「妻が体調を崩していて」と説明して予定していたオンラインミーティングの時間をずらして終わらせると、定時ですぐに自宅に帰った。

 だが、仁奈の部屋はもぬけの殻だった。綺麗に整えられたシーツ。机の上に置かれていた仁奈の本も、クローゼットの中の仁奈の服もない。まるで誰も住んでいなかったような。

「どういうことだ?」

 朝、見送った時の仁奈は普通だった、と思う。

 でも状況から見るに家出だ。首筋に冷や汗が滲む。

 家出だとして、理由はなんだ。他に好きな男ができたのか? 瞬間的に怒りが沸騰しそうになったが、仁奈はそんなことで出て行くような不義理な女性ではないと無理やり納得させた。仁奈ならきっと、正直に俺に打ち明けて直接別れを……いや、考えるのはよそう。心臓に悪い。

 他に……もしかして俺がなかなか父親を説得できないから呆れてしまったんだろうか。電話やメッセージでは埒が明かないので直接話をしようと思っているのだが、父は後援会への挨拶回りや勉強会やらで忙しいらしくなかなか会う時間を確保できないのだ。

 結婚が先延ばしになっていることが原因なら、すぐさま謝りたい。

 俺はスマホを入れたスラックスのポケットに視線を落とした。
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