エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!

パーティーへ

 自由時間が一日減ってしまったけれど、イギリス観光は順調に進んだ。

 二日目は、グローブ座でシェイクスピアの『真夏の夜の夢』を鑑賞してから大英博物館を見て回り、三日目はヨークシャーまで足を伸ばして聖地巡礼を楽しんだ。

 そして、あっという間に約束の四日目。

 黒崎さんは、予想よりはるかに早い朝十時に私を迎えに来た。

「パーティーって夕方からなんですよね?」

「服から用意しなきゃいけないからな」

 私が年下だとわかったから敬語が抜けている。

 今日の黒崎さんは、眼鏡とマスクの完全防備スタイルに戻っている。服装はカジュアルなアイボリーのスーツ。青いシャツが爽やかだ。対する私はジーンズ姿。服のテイストが違いすぎて、隣を歩いて良いのか不安になる。

 キビキビとした足取りの黒崎さんに連れられ、向かったのはロンドンの中心部。世界中のラグジュアリーブランドが集まるボンド・ストリートだった。

 白い石造りの建物が立ち並ぶ通りは、朝日に照らされ眩さを放っている。建物にはそれぞれのブランドのロゴが描かれた旗が掲げられていて、荘厳な雰囲気だ。

 一般庶民の私には縁遠いお店ばかりだけれど、黒崎さんは躊躇せず超有名アパレルショップに足を踏み入れた。

「彼女に似合うワンピースを」

 いつの間にか眼鏡とマスクを外し、麗しいイケメンスタイルに戻った黒崎さんが、店のスタッフにそう告げる。私はスタッフにされるがまま試着を繰り返し、着心地の良いシャツワンピースを買ってもらった。黒をベースにした幾何学模様の柄で、歩くたびに裾がひらひらと踊るように揺れるのがかわいい。
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