エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「見たところ連れはいなさそうですが、ひとりで旅行ですか?」

「はい。一緒に行く予定だった友人が急に行けなくなってしまって、ひとり旅行です」

「なるほど。そういうことならある程度予定に融通はききそうですね。四日後のパーティーの日は一日予定を空けてもらいたい。朝から準備をする必要がありますから」

 問答無用で話が進められている。でも外交問題に発展しかねないと言われては、断ることもできない。まあ、それまでに行きたいところは全部回ればいっか。

「ホテルはどちらですか? お送りしましょう」

「大丈夫ですよ。ひとりで行けると思いますし」

「いえ、あなたの滞在先を把握したいので、教えていただけますか?」

 そういうことですか。

 お仕事上必要なことだとわかって、私は気兼ねなくホテル名を伝えた。

 電車かバスで向かう気満々だったけれど、黒崎さんがタクシーに乗り込んだので私もそれに従った。相手は天下の国家公務員。従わなきゃいけない気分になる。

 移動中は入国審査官のように年齢や職業など経歴を細かく聞かれた。ペンブリッジ子爵に得体の知れない人間は近づけるわけにはいかないかららしい。ちなみに黒崎さんは三十歳。私より三つ上だということも会話の中でわかった。

 ホテルに到着するとチェックインまでしっかり見届けられ、「じゃあ四日後に」と言い残して黒崎さんは去っていった。

 ロンドンに着いてまだ数時間しか経っていないけれど、出発前から今まで色んな出来事が起こりすぎてもうクタクタだった。

 私はホテルの部屋に着くなりベッドに潜り込んだ。
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