エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「あの、これいくらでしたか? お支払いさせてください」

「君に支払ってもらうつもりは元々ないよ。旅行中の貴重な一日をもらうから、そのお礼も兼ねてると思ってくれ。あと、なんか終わったつもりでいるみたいだけど、買い物はまだこれからだぞ」

「えっ?」

「さすがにそのワンピースだとパーティーに着ていくにはカジュアルすぎる」

「じゃあ、どうしてこれを?」

「今から行く店は、さすがにTシャツとジーンズじゃ入れない」

 次に連れて行かれたのは、先ほどの店よりラグジュアリーさが増していた。天井にシャンデリアが吊り下がっている。庶民が足を踏み入れてはいけないオーラが充満している店内に慄いていると、また試着室に放り込まれた。

 スマートな女性店員にすすめられたのはきらびやかなドレスだった。ハリウッド女優がレッドカーペットを歩くときに着ている衣装に似ている。明らかに分不相応だが、馬子にも衣裳だと信じたい。

 胸元や背中がぱっくり開いたドレスが多い中、私が選んだのはクルーネックで胸も背中も守られているもの。ゴールドの生地が華やかで、首元にはクリスタルがぐるりと一周刺繍されている。

「こうして着飾ると結構印象が変わるな。すごく似合ってる。綺麗だよ」

 スポンサーである黒崎さんにも見せると、にこやかに言われた。お世辞だとわかっていても、綺麗と言われると照れる。

 服以外に靴とアクセサリーも揃えて買い物を無事終えると、私はもうへとへとになっていた。お店を何軒もはしごしたからというのもあるけれど、気疲れの方が大きい。
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