エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!

恋人のふり、のはずが

 なるべく早い方がありがたいと伝えると黒崎さんは予定を調整してくれて、電話から二日後に父に会いに来てくれた。

「本当に、本っ当にありがとうございます」

 自宅の最寄り駅で待ち合わせをして、会うなり頭を下げると黒崎さんは「大げさだな」と苦笑した。

 黒崎さんは休日だけどスーツだ。しっかり、彼女の父親に挨拶する恋人を演じてくれている。

「気にしなくていい。実は俺も今度会うときにまた恋人のフリをお願いしようと思っていたから」

 実はロンドンのお礼と称して食事に誘ったのは口実で、再来月にイギリス大使館で開催されるレセプションに一緒に参加してほしいと私に頼むつもりだったらしい。

「ロンドンのパーティーで、君を恋人として紹介しただろ。だから整合性を取りたくてね。パーティーに同伴させるような恋人とたった数ヵ月で別れるのは、外聞がよろしくない」

「それなら電話で言ってくださればよかったのに」

「電話だと断られる可能性もあるだろ。断れない状況を作ってから打ち明ける方がいいと思ったから」

 そう言って微笑む黒崎さんの背後に黒いオーラが見えた。

 駅から自宅のマンションまでは徒歩二十分ほど。私はいつもは歩いて帰るけれども、黒崎さんは当たり前のようにタクシーを呼んだ。早く行ける手段があるのに歩くのは時間の無駄、とのこと。
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