エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 電話越しに焦れた声が聞こえて、私は慌てて姿勢を正した。

「すみません、お久しぶりです」

『うん、久しぶり』

「せっかくお電話していただいたのに失礼かもしれないですが、お礼なんて結構ですよ?」

『遠慮しなくていい。それにお礼と一緒に相談したいこともあるんだ』

「相談?」

『詳しくは会った時に話すよ。それで、行きたいところはある? フレンチでも懐石でもどこでも。君のおかげでとても助かったから、遠慮しないで言ってくれ』

「どこでも……」

 本当に、どこでも? 私の頭にひとつの考えが閃く。

「あ、あの……それなら食事じゃなくて、一日だけ恋人のフリをしてもらえませんか?」

『どういうこと?』

「父に会っていただきたくて」

 でも途中で自分が非常識なことを口走っていることに気が付いて、言葉尻が小さくなる。

「ごめんなさい。やっぱり今のは冗談で……」

『構わないけど』

「えっ?」

 予想外の返答に、私は目を大きく見開いた。

『恋人のフリだろ? 引き受けるよ。いつ、どこに行けばいい?』
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