エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!

期限付きの恋心

 滉太郎さんが好き。

 気持ちが輪郭を帯びると、心に根を下ろしていつも居座るようになった。

 夕食の支度をしている時、私の料理を美味しいと言ってくれた滉太郎さんの笑みを思い出して、ひとりで赤面したり。朝、もう出勤してしまった滉太郎さんが使ったフェイスタオルが洗濯機に放り込まれているのを見て、今朝は会えなかったなと切なくなったり。

 毎日、情緒が乱れてる。気分が上がったり下がったり忙しくて、心臓が休まらない。あの反応は不自然に思われなかったかなとか、挙動不審じゃなかったかなとか気にしてしまう。寝る前はその日の反省会で、なかなか寝付けない。おかげで寝不足だ。

 今は失態を犯していないと思うけれど、このまま一緒に住んでいたらいつか気持ちがバレてしまうかも。

 私たちはお互いのメリットのために結婚のフリをしているだけ。私たちの関係に恋愛感情は必要ない。私の想いは滉太郎さんにとっては迷惑でしかない。

 滉太郎さんに面と向かって迷惑だと言われたら……初めて会った時のような冷淡な顔を思い出してヒヤリとした。

 この気持ちは絶対知られてはいけない。

 そういうプレッシャーを抱えながら生活していると、一日が終わると疲労感に襲われた。心が少しずつすり減っていく。

 いっそ、滉太郎さんとはなるべく顔を合わさないほうがいいのかもしれない。
< 62 / 123 >

この作品をシェア

pagetop