愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた

事故

 これから仕事に向かうというロジェリオを見送るために、エリシアは玄関ホールへと向かった。そこで、ちょうど帰宅した父親とばったり出会う。姿は見えないものの執事も帰ってきているはずで、エリシアの身体がこわばった。それに気づいたのか、ロジェリオはさりげなくエリシアの肩を抱いてくれた。

「おや、もう帰ってしまうのですか? お茶をご一緒したかったのに残念だ」

「申し訳ありません。このあと仕事の予定が入っておりまして。次回はぜひ」

 父親の言葉に、ロジェリオは感じのいい笑みを浮かべてそう言う。近況について少し言葉を交わしたあと、父親は「次こそはゆっくり話したい」と言いながら執務室へ戻って行った。

 あらためてロジェリオを見送ろうとしていると、執事のザカリアスがやってきた。礼儀正しく頭を下げる執事を見て、ロジェリオはエリシアの腰を抱き寄せる。

「エリシア、外まで見送ってくれる? 少しでも長く、きみといたいんだ」

「えぇ、もちろん」

「本当は、このまま一緒に連れて帰りたいくらいだけどね」

 冗談めかしてそう言いながら、ロジェリオがエリシアの頬を撫でた。そっと指先が耳に触れ、大好きなかすみ草のピアスがここにあることを教えてくれる。エリシアは胸に手を当てて、彼が痕を残してくれた時の甘く幸せな気持ちを思い出そうとしていた。

 執事の視線を避けるようにロジェリオに寄り添いながら、エリシアは馬車のそばまで行く。離れがたい気持ちはあるけれど、仕事の合間を縫って尋ねてくれた彼にこれ以上の無理は言えない。それでも名残惜しくて、エリシアはロジェリオの手を握った。

「気をつけてね、リオ。睡眠は、しっかりとって」

「分かってる。近いうちにまた会おう。印を上書きしなくちゃならないからね」
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