愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
引き寄せられる運命
動揺のあまり一瞬硬直してしまったが、すぐにこの場から立ち去らねばと思う。彼にとってエリシアは初対面で、同じ本を好きだという共通点がなければ、親しくなることはないはずだ。
「あ、ありがとうございます。急ぐので……」
顔を見ないようにうつむいたまま早口でそう言おうとしたエリシアは、ロジェリオのジャケットの袖が濡れていることに気づく。よく見ると彼は左手にグラスを持っていて、エリシアを受け止めたせいで中身をこぼしてしまったのであろうことが分かった。
さすがに、自分のせいでジャケットを汚してしまったと知って、立ち去るわけにはいかない。エリシアは慌ててハンカチを取り出した。
「申し訳ありません、ジャケットを汚してしまいました」
「炭酸水ですから、問題ありませんよ。それより、あなたが濡れなくてよかった」
気遣うような優しい言葉をかけられて、胸が苦しくなる。顔を見ることはできなくてうつむいていると、ロジェリオが「おや」と何かに気づいたような声をあげた。
「その刺繍は、あなたが?」
「え……」
かつて出会った時と同じ質問を投げかけられて、エリシアは目を見開く。まるで時間が巻き戻ったかのようだ。
握りしめたハンカチにはかすみ草の刺繍が施されていて、よりによってどうしてこのハンカチを選んでしまったのかと自分のうかつさを嘆きたくなる。
「こ……れは」
自分で刺したものではないと言えば、ロジェリオはエリシアへの興味を失うかもしれない。そう思うのに、言葉は喉に貼りついたように出てこない。
黙ったままのエリシアを見て、ロジェリオは小さく笑った。その顔はいつもエリシアに向けられていたものと同じで、涙が出るほどに嬉しくなる。
「失礼、とても好きな花だったので、つい」
「そ……そうなんですね」
「あ、ありがとうございます。急ぐので……」
顔を見ないようにうつむいたまま早口でそう言おうとしたエリシアは、ロジェリオのジャケットの袖が濡れていることに気づく。よく見ると彼は左手にグラスを持っていて、エリシアを受け止めたせいで中身をこぼしてしまったのであろうことが分かった。
さすがに、自分のせいでジャケットを汚してしまったと知って、立ち去るわけにはいかない。エリシアは慌ててハンカチを取り出した。
「申し訳ありません、ジャケットを汚してしまいました」
「炭酸水ですから、問題ありませんよ。それより、あなたが濡れなくてよかった」
気遣うような優しい言葉をかけられて、胸が苦しくなる。顔を見ることはできなくてうつむいていると、ロジェリオが「おや」と何かに気づいたような声をあげた。
「その刺繍は、あなたが?」
「え……」
かつて出会った時と同じ質問を投げかけられて、エリシアは目を見開く。まるで時間が巻き戻ったかのようだ。
握りしめたハンカチにはかすみ草の刺繍が施されていて、よりによってどうしてこのハンカチを選んでしまったのかと自分のうかつさを嘆きたくなる。
「こ……れは」
自分で刺したものではないと言えば、ロジェリオはエリシアへの興味を失うかもしれない。そう思うのに、言葉は喉に貼りついたように出てこない。
黙ったままのエリシアを見て、ロジェリオは小さく笑った。その顔はいつもエリシアに向けられていたものと同じで、涙が出るほどに嬉しくなる。
「失礼、とても好きな花だったので、つい」
「そ……そうなんですね」