政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
三章 繋がる恋心

一 政略結婚夫婦の距離感

厳しい寒さが続く、二月上旬。
すみれは、今日も今日とて孤独に業務を終えて退社した。


外に出た瞬間、一気に身体が冷える。コートもマフラーも手袋もしているのに、この冷たい空気の中ではささやかな抵抗のように思えた。


昨日は珍しく雪が降ったが、今日はよく晴れていた。都会らしく積もることもなく、街はいつも通りに動いている。
すみれだけが、数日前から時間が動いていないようだった。


(慧さん、今日は晩ご飯を食べるって言ってたけど、どんな顔して過ごせばいいのかな……)


ふう……とため息が漏れる。


遡ること、数日。すみれは、とうとう慧に抱かれた。


甘くて、淫らで、苦しくて、激しくて、少しだけ痛くて……。知らなかった感覚をたくさん味わい、最後には意識を手放してしまった。


目が覚めたのは、翌朝。それも、彼の寝室で。


玄関の方でドアが閉まる音が聞こえ、ぼんやりと目を開けた。すぐに睡魔に負けて瞼を閉じたが、身体に当たるシーツの間隔がやけに鮮明だと気づく。
寝ぼけ眼で布団をめくると、なぜか素っ裸だったのだ。


覚醒した頭で状況を把握した途端、すみれはベッドから転がり落ちそうになった。あのときは、鏡を見なくても顔が真っ赤だと自覚できた。


幸いだったのは、慧がすでに出勤していたこと。さきほどの物音は彼が家を出た音だと把握し、急いで落ちていたルームウェアを纏ってベッドから飛び出した。


自室に行って着替えようとすると、思いのほか身体が綺麗で……。全身鏡の前で理由を考えて、羞恥で卒倒しそうになった。

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