政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました

四 婚約者の本心

季節は流れ、大型連休も過ぎた五月中旬。
銀座の老舗ホテルで、慧とすみれの婚約披露パーティーが開かれた。


すみれの誕生日から、約四か月。その間に色々なことが変わっていったのだ。


あの数日後、父から正式に彼との婚約が決まったことを告げられた。御門からの支援を得られる目途も立ったようで、父はとても喜んでいた。
正式なプロポーズはなかったが、それでも進んでいくのが政略結婚なのだろう。


二月末には両家の顔合わせを済ませ、今後のスケジュールが決まっていった。もちろん、すみれに選択肢などない。


父もだが、慧も御門家も多忙な人間ばかり。特に、御門の一族は海外に住んでいたり出張に行ったりする者も多く、全員の都合を合わせるだけでも一苦労なのだ。
すみれが彼やみんなの予定に合わせるのは、当然だった。


両家の希望により、結納はなし。それよりも、婚約披露パーティーを開催したいという話になった。


結納は、双方の家だけのこと。しかし、パーティーを行えば、多くの招待客との交流や利益が生まれる。それは、両家にとって結納よりもずっと意味があった。
結婚式や披露宴だけではダメなことくらい、すみれも重々理解している。


婚約披露パーティーの日取りは、顔合わせの日に決まった。慧の父親がその場で会場を押さえ、大まかな予定が話し合われていく。


御門家が懇意にしているブランドで衣装を用意すること、料理の内容、招待客の人数。すみれを余所に、必要事項が暫定的に決定していった。


顔合わせの二時間ほどの間の半分以上が、婚約披露パーティーの話だったのだ。


まるで、ビジネスの会話を聞いているよう。
すみれはずっと蚊帳の外にいたせいか、他人事みたいだった。


現実味がないまま顔合わせは終わり、慧に自宅まで送ってもらったけれど……。道中の車内では、いつも通り特に会話が弾むこともない。


「男と違って、女性は衣装を決めるのは大変だと思う。できる限り付き添うつもりだが、無理な日はすみれさんのお母様にお願いできないだろうか。ひとりだと不安だろうし、かと言って俺の母だと気を使うだろうから」


彼は相変わらず口数は多くないが、気遣いは感じられる。それが、小さな安心感に繋がっていた。

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