政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました

二 ぎこちない距離感

誕生日デートから、数日が経った。


すみれは、あの日の記憶を繰り返し反芻しては幸福感に浸っている。思い出すたびに嬉しくなり、ふわふわとした気持ちになった。
その記憶に浸っていると会社にいても憂鬱にならないのだから、本当に不思議だ。


「これ、頼まれていた資料です。一昨年の売上が抜けていたので修正しておきました。データはクラウドにも上げてます」


コピーしてホッチキスで纏めた資料を先輩に渡し、次の業務に取り掛かる。心が軽いからか、タイピングの速度が上がっていく。
終業時刻を迎える頃には、この業務もきっちり終わった。


(今日は買い物をして帰らなきゃいけないな)


帰路に就き、冷蔵庫の中を思い浮かべる。


慧は外注や宅配も提案していたが、すみれは買い出しに行くのは苦ではない。むしろ、自分の目で見て買い物をしたい派だ。
重い物は宅配に頼ることもあるものの、週に二回ほどスーパーに行っていた。


自宅マンションの最寄り駅で買い物を済ませ、帰宅する。案の定、彼はまだ帰ってきていない。


今夜のメニューは、ぶりの照り焼きだ。副菜は作り置きついでに数品準備するつもりで、野菜をたくさん買った。


すみれはエプロンをつけると、手際よく作業していく。三口コンロとオーブンレンジを駆使し、一時間ほどメインを含めて八品を作り上げた。


ほうれん草の胡麻和え、キャロットラペ、紫キャベツのマリネ、ごぼうサラダ、れんこんのきんぴら、かぼちゃの煮つけ、箸休めの大根漬け。


ワンプレートに盛りつけ、残ったものは容器で保存する。これで数日は持つし、お弁当にも使えるのだ。


静かに夕食を済ませ、片付けも終えてしまう。そこへ、ちょうど慧が帰宅した。


「おかえりなさい。今日は少し早いんですね」


時刻は二十時半。いつもと比べると、だいぶ早く帰ってきた。


「ただいま。会食が予定よりも早く終わったんだ」


端的に答えた彼が、紙袋を差し出してくる。

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