政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました

四 あの夜から君を Side Kei

一月も残り数日。
『御門ビル』の副社長室にいる慧は、ドアをノックされてパソコンから顔を上げた。


「はい」
「失礼します」


副社長室に入ってきたのは、母方の従兄弟で秘書の誠二だ。


「今夜の会食ですが、中止になりました。先方が体調不良のようです」


詳しく訊けば、会食相手の取引先の社長がインフルエンザに罹患したらしい。それも、ついさきほどわかったのだとか。


季節柄、ちょうどインフルエンザが流行しており、つい先日も別の予定がキャンセルになったばかりだ。リスケジュールをするのは大変だが、仕方がないだろう。


「わかった」


慧は小さく頷き、暗くなり始めた窓の外に視線を遣った。


大手町の一等地にあるこの十五階建てのビルは、御門が所有しているものだ。地下一階から重役室がある最上階に至るまで、自社のオフィスが入っている。


御門ホールディングスは、貿易業と不動産業を中心に展開している。貿易業は石油を、不動産業は企業相手のものだ。


それ以外にも、大型商業施設やインターナショナルスクール、飲食店なども経営している。御門家の人間が個人で手掛けている会社も挙げれば、もはやキリがない。


戦後から発展し続け、現在のグループ全体の年間売上高はおよそ二〇兆円。国内だけではなく、海外でも名の知れた企業である。


御門本家の長男である慧は、一昨年に取締役副社長に就任したばかり。
会長には祖父、社長には父が就いている。グループ企業の取締役や重役は、御門の人間が多い。


外部顧問を含め、優秀な人材も数多いる。しかし、グループの核になる役職には本家の者が継ぐことになっている。


慧の弟も、御門不動産の取締役副社長である。いずれは、御門ホールディングスで慧ととも指揮を執っていくだろう。

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