終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない

第12話 打ち上げ花火はあがらない

大阪の南港にあるインテックス大阪。
 
「藤原さん、先日はありがとうございました」
「こちらこそ。本日はよろしくお願いいたします」
「藤原さんが良い仕事してくれたおかげで、パンフも好評ですよ」
「嬉しいお言葉、ありがとうございますっ」 

(終電逃した甲斐あったー!!) 
 
クライアント企業の担当者と挨拶を交わしながら、あたしは展示会場を見渡した。
三泊四日の出張も三日目。
今日は挨拶回りと、新規開拓の日だ。
 
先ほどの担当者と今後の販促計画を数分だけ確認し、新商品の反応や来場者層について簡単に意見交換した。
 
「また相談させてください」
「ぜひ。いつでもご連絡ください」
 
朝一番で合流した後輩が、羨望の眼差しで頷く。 
 
「さすが藤原さん!あの担当者から褒められるなんてっ」
「チームで頑張ったからでしょ」

こうやって、直接クライアントから褒めてもらうのは嬉しい。
営業冥利に尽きる瞬間でもある。
 
とはいえ、喜ぶ素直な気持ちは心の奥底に隠し、クールな仮面をかぶったまま。 
あたしは、軽く後輩の背中をタッチして、率先していった。
   
「よしっ、気合い入れて行くわよ」
「はいっ!」
 
展示会場の熱気に飛び込むように、あたしは次のブースへ向かった。

新規の企業担当者と名刺交換を、次々とこなしていく。

「藤原先輩って、ほんとフッ軽ですよね」
「今日も感触が良かったブースはあるけど、取引に繋がるかは正直わからないからね。できる限りのことはしておかないとね」

小休止がてら、近くのカフェスペースでコーヒーブレイク中。
話した内容を忘れないよう、些細なことも手帳にペンを走らせていく。   

(もっとスマートにこなせたらいいんだけどなぁ……)
 
「よしっ、あと一社は回れそうね」
 
手帳を閉じた、その時だった。
 
「お話し中のところ、失礼いたします」 
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