終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない

第13話 彼女には敵わない

出張から戻って一週間。
結局、出張当日の朝以降、一度も綾人の顔を見ていなかった。
ワタセホテルの新規事業立ち上げが本格化したらしく、綾人はホテルと会社を行き来する日々。

「今日も泊まり」とか「明日も遅くなる」とか。
届くのは、それだけ。
  
(花火大会の埋め合わせのことも、 浴衣のことも……なにも言わない)
(婚約者のフリなのに、本物みたいに寂しいなんて反則だ)
 
後輩の声に意識が引き戻された。
   
「藤原さん、外線二番にC社からお電話です」
 
取り次いだ電話は、案件キャンセルの連絡だった。
先日のインテックス大阪で営業したときは、好感触だっただけに、気が沈む。

「先輩、残念でしたね……」
「こういうこともあるよ。でも縁が繋がる日が来るかもだしアプローチは続けよう」
「わかりました……」
「ほら、切り替えていこっ?まだ返答をもらってない会社もあるから」  

後輩への言葉は、まるで自分に言い聞かせているのと同じ。  
実は、今朝も別の会社からメールでも、同様の連絡が届いた。
こういったことは、営業ではよくあること。
      
(なんでだろ)
(九条さんなら……取れてたのかな)
< 45 / 121 >

この作品をシェア

pagetop