終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない

第21話 住む世界が違うから

「うん、大丈夫」

洗面所の鏡で、肌のコンディションをチェックする。
メイクの上からだと、泣いた跡もわからない。 
髪を結んで、自分を奮い立たせた。

(仕事の失敗は、仕事で挽回する……しかない)

その言葉をくれた彼は、昨晩メッセージをくれたきり。
あたしは怖くて既読にしなかった。
昨日、帰ってきて気付いたことがある。
自分の家なのに、どこか他人の居場所みたいで孤独だった。

(祭壇も、アクスタも、ペンラも、全てが揃っているのに)

いつの間にか、居心地の良い場所が変わっていた。 
 
「でも……あたしなんかが、綾人の家に帰っていいのかな」

弱々しい呟きは、誰にも届くことなく静かにとけていった。            
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